平成29(2017)年
669 在りし日の妻が懐かしみゐし磯に独り傘寿の膝をひたせる
雑誌[NHK短歌] 1月号,題〈懐かしい〉・添削ページ・(佐伯裕子)
668 長袖のセーラー服に更(か)へし孫「もつとよく効く塾へ移らう
雑誌[NHK短歌] 1月号,兼題〈もっと〉・佳作・(大松達知)
667 庭の草を放置したるは虫の音をかく聞くためと隣人に説く
雑誌[NHK短歌] 1月号,兼題〈庭〉・佳作・(永田和宏)
666 いくたびか旋回の輪をひろげゐし鳶は発ちゆく秋の岬を
読売歌壇・ 12/4 (岡野弘彦・添削)
665 独居爺がまた出す電気カーペットにかつて六人(むたり)よ座も決まりゐて
雑誌『現代短歌』1月号[読者歌壇]・佳作(大下一真)
664 戦後期には林檎の歌がつぎつぎにヒットせしかな甘くせつなく
読売歌壇・ 11/20 (小池 光)
663 忘れざり師家(しか)への道の生垣にこの季(とき)ごとに見し山茶花を
桃の会・12/3・(鷲野和弘)石田圭介肯定
662 暮れいそぐ軒端に侘びて佇つわれに灯るごとしよ石蕗(つわぶき)の花
桃の会・12/3・(石田圭介+鷲野和弘)
661 訪ふたびに曾孫の汗疹(あせも)なげきつつ孫はいよいよ母となりゆく
NHK・第19回(平成29年度)・全国短歌大会・入選
660 CMのドッグフードを 「おいしさう」 とねだりし倅(せがれ)いま食通とぞ
NHK・第19回(平成29年度)・全国短歌大会・入選
659 内視鏡の帰路の蕎麦屋の新走り待ちかねゐしか五臓六腑は
雑誌[NHK短歌] 12月号,題〈走る〉・添削ページ・(永田和宏) ※原歌=「新走りを」の助詞を削除
658 血族を均(なら)さば凡そ三着か末なる孫の徒競走見て
雑誌『現代短歌』12月号[読者歌壇]・佳作(大下一真)
657 初めての眼鏡贈れば「何もかも汚ねえなあ」と見まはすよ孫
雑誌『現代短歌』12月号[読者歌壇]・佳作(久我田鶴子)
656 夕空を仰ぐ浴衣の少女らの「あめい」「あめる」は雨催ひらし
しののめ歌会,ふらんす堂通信154号・10/末・ (東直子)
655 摘まみても抗(あらが)ひ見せで放ちても喜び淡き糸蜻蛉かな
しののめ歌会,ふらんす堂通信154号・10/末・[糸]秀作(東直子)
654 ガンディーの伝記映画の幕ぎはに糸を繰りゐし逆光シーンはも
しののめ歌会,ふらんす堂通信154号・10/末・[糸] (東直子)
653 蟬の腹を小突けば網戸より跳ねて支離滅裂よ袋小路に
雑誌『短歌』 11月号・[角川歌壇]・佳作 (加藤治郎)
652 遠富士や地球に残る原油量はかの体積の半(なか)ばほどとか
雑誌[NHK短歌] 11月号,兼題〈残る〉・佳作・(大松達知)
651 平成の二十九年の東京の残暑の底を神田川かな
雑誌『現代短歌』11月号[読者歌壇]・佳作(久我田鶴子)
650 「盟友は原爆投下を詫びぬ国」わがいささかの川柳録より
雑誌『現代短歌』11月号[読者歌壇]・佳作(大下一真)
649 秋雲の来たる方(かた)にはミサイルと核以(も)て仇(あだ)をなす輩(やから)ども
桃の会・10/1・(石田圭介)
648 書生われにその怪しげな先生の鞄は軽く気は重かりき
雑誌[NHK短歌] 10月号,兼題〈怪しい〉・佳作・(佐伯裕子)
647 離陸機の窓にあふるる朝焼けをはからずも見きソ連末期に
雑誌『現代短歌』10月号[読者歌壇]・佳作共選(久我田鶴子+大下一真)
646 傘寿わがウォーキングに噴き出でよ人類にのみ顕著てふ汗
『定年歌壇』・タウン紙 [定年時代]9月上旬号(宮澤 燁)
645 川普請の重機黙(もだ)せるたそがれの土手の斜面(なぞえ)に月見草らし
桃の会・9/3・会員選評+石田圭介肯定
644 晩(おそ)夏の多摩ゆ偲べりかの高鷲(たかし)の対(つい)の歌碑にもさぞや蜩(ひぐらし)
桃の会・9/3・会員選評+石田圭介肯定
643 「店内デノ選挙談議ハ禁止」 てふ張り紙出たり馴染む酒場に
雑誌『短歌』 9月号・[角川歌壇]・佳作 (安田純生)
642 自動車のワイパー真似て両手振る童にもつと来たれ雨脚
雑誌『現代短歌』9月号[読者歌壇]・特選 (久我田鶴子)
641 どくだみに押し寄せらるる隠居家の軒には蜂の巣も嵩みゆく
雑誌『現代短歌』9月号[読者歌壇]・佳作(大下一真)
640 咲き競ふ百日紅(さるすべり)らに声あらばこの並木こそけたたましけむ
桃の会・8/6・会員選評+石田圭介肯定
639 桟橋にかがみて見入る夜光虫を羨(とも)しみ仰ぐ魚もゐるべし
しののめ歌会,ふらんす堂通信153号・7/末・[橋]秀作(東直子)
638 靖国の宮の池なる小橋にてよろめくわれや元少国民
しののめ歌会,ふらんす堂通信153号・7/末・[橋] (東直子)
637 あの橋に汝(な)を拾ひしとからかはれ嘆きゐるのか平成の子も
しののめ歌会,ふらんす堂通信153号・7/末・[橋](東直子)
636 冷や酒にブルーチーズが可笑しきか赤ワインにて烏賊刺身(いかさし)の友
雑誌[NHK短歌] 8月号,兼題〈可笑しい〉・佳作・(佐伯裕子)
635 あぢさゐのをさなきまりにさすいろのことによろしもとのぐもるけさ
雑誌『現代短歌』8月号[読者歌壇]・佳作(奥村晃作+浜名理香)
634 かつての田に替れる町の屋根々々へ可惜(あたら)さみだれ今日もさみだれ
桃の会・7/2・会員選評を参考に推敲
633 五月雨に海中(わだなか)めきてきし多摩をモノレールにて鮫のごと行く
桃の会・7/2・会員選評を参考に推敲
632 聖橋(ひじりばし)の裏のアーチに反射光の斑紋ゆれて夏至間近なり
読売歌壇・ 6/26 (栗木京子)
631 傘寿われの頭脳と下肢はパソコンとバッテリー式自転車に依る
雑誌『短歌』7月号・[角川歌壇]・秀逸 (米川千嘉子)
630 かつてここ和歌の浦より山路へと旅ゆかましし有間ノ皇子はも
雑誌[NHK短歌] 7月号,兼題 [固有名詞のある歌]・佳作・(永田和弘)
629 卒業後も生徒会長なりし君はまた推されゐむあの世にてすぐ
同窓生・長谷川啓介君三回忌(4/24)に献詠
628 池に散る花びらを呑む鯉どちの口腔もまたみな桜色
雑誌『NHK短歌』7月号・ラジオ文芸選評・佳作・添削・(篠 弘)
627 「もうがきぢやねえ」と拒否せし柏餅を孫め密かに喰らひたるらし
雑誌『現代短歌』7月号[読者歌壇]・秀作(浜名理香)
626 青葉せる乃木神社にてをりからの夕立もまた良しと宿るも
桃の会・6/4・会員評を参考に推敲
625 碑(いしぶみ)も植田の風も文倉(ふみくら)もなつかしきかな訪ひ重ねきて
桃の会・6/4・(石田圭介)ほか
524 幾トンネル抜けてふたたび慕ひきし妹背の歌碑に若葉風かな
桃の会・郡上・高鷲歌会・6/4・会員選 ※山川京子先師の歌碑を訪ふ。
523 発展のしるしと思ひ込みてゐき工場群の黒き煙を
雑誌『短歌』6月号・題詠[工場]・(御供平佶)
622 落ひばり高天ノ原ゆ聞こえしは神の笑ひか神の嘆きか
雑誌[NHK短歌] 6月号,兼題 [笑]・佳作・(大松達知)
621B 「春泥や子の足跡の青き空」を 「足跡に」かと迷ふ推敲
雑誌『現代短歌』6月号[読者歌壇]・佳作(奥村晃作)
621 この春の開会式のテレビには行進せずよ郷の球児ら
雑誌[NHK短歌] 6月号,兼題 [テレビ]・佳作・(永田和弘)
620 初つばめ南の海を見てきしか岩礁埋めて基地となせしを
朝日歌壇・5/15 (馬場あき子・添削)
619 薪能を待てば虞(おそ)れの俄か雨けだし 「巴」が遺恨なるべし
桃の会・5/7・石田圭介ほか好評。
618 山梨への峠越ゆれば家々に逸(はや)る幟や 「風林火山」
桃の会・5/7・石田圭介選評を参考に推敲
617 現し身の浮游ねがひて修行せる者の頭脳を洗へざりにき ※的場君
しののめ歌会,ふらんす堂通信152号・4/末(東直子)
616 富士を望む観覧車より俯瞰せばわが多摩湖には鴨の陣かな
しののめ歌会,ふらんす堂通信152号・4/末・[遊園地]佳作 (東直子)
615 祝着や遊園地にて耳にせる「ええ思ひ出になるで」「さうやね」
しののめ歌会,ふらんす堂通信152号(4/末)・東直子
614 茶髪にて二十歳になるや750cc(ななはん)の真つ赤なやつを駆(か)るよ孫めは
雑誌[NHK短歌] 4月号,兼題 [袋]・佳作・(小島なお)
613 「爺ちゃんは来ないで」てふを押しかけし卒業式はミュージカルめく
雑誌『現代短歌』5月号[読者歌壇]・佳作(奥村晃作+浜名理香)
612 もしやして兄弟姉妹ならずやとためらひがちに焼く目刺かな
テレビ放送・5/12「NHK短歌」・題[焼く] (大松達知)
611 雪残る伊吹山(いぶき)仰ぎてきし車窓に迫る二上山(ふたかみ)あすは兄が忌
桃の会・4/2・石田圭介評「山は不要か」
610 かの志功が描きし女人(おみな)見てもまた偲び奉(まつ)れり京子先師を
山川京子先生三年祭に献詠・3/20
609 高齢者へのストレッチ教室をサボりて含む雪見酒かな
雑誌[NHK短歌] 4月号,兼題 [雪]・佳作・(伊藤一彦)
608 胆嚢てふ袋に異常見つかりて半世紀余の酒を思へる
雑誌[NHK短歌] 4月号,兼題 [袋]・佳作・(小島なお)
607 存分に落書きさせてアンチさせて水掛けさせて障子洗へる
角川全国短歌大会⑧・題[書]予選通過
606 ひらがなも定規巧みに使はれし密告書簡なほ秘匿せり
角川全国短歌大会⑧・題[書]予選通過
605 隣る町に昨日(きぞ)見かけたる桃の花に今日も寄り来つ明日も訪ふべし
桃の会・3/5・石田圭介評を参考に推敲
604 ふるさとや沖の潮目をながめつつ虚実まじりに語る来(こ)し方
桃の会・3/5・会員選評あり
603 われこそは日の本一の土筆ぞと背(せい)くらべらし富士の裾野に
雑誌『不二』二月号[平成二十九年度・勅題「野」詠進歌集]に収録
602 隠岐の蟻よ汝が遠祖らは仰ぎけむ新島守(にいじまもり)と告(の)らす尊貴を
第18回「隠岐後鳥羽院大賞」・佳作(安田純生)
601 残りゐし歯根抜かれてン年後のわが骨揚げの嵩はまた減る
雑誌『現代短歌』3月号[読者歌壇]・秀作(奥村晃作)+佳作(浜名理香)
600 昼の苑に見つけし月を仰がばや紅白梅に透かし比べて
桃の会・2/5・会員選評あり
599 大朝日けだし地球の裏にてはアマゾン染むる斜陽なるべし
しののめ歌会,ふらんす堂通信151号・1/末(東直子)
598 親の代まで「お日様」と唱えゐしを我らたちまち「太陽」にせり
しののめ歌会,ふらんす堂通信151号(1/末)・東直子
ネ ガ ポ ジ フラッシュバック
597 師の墓碑はいづこに坐すや陰画・陽画の瞬間切替映像めく雷光下
しののめ歌会,ふらんす堂通信151号(1/末)・東直子
596 徘徊を三度尋ぬるスピーカーの声こだませり山を負ふ里
雑誌[NHK短歌] 2月号,兼題 [山]・佳作・(伊藤一彦)
595 終電を下りて静もる街並みに確(しか)と待ちしよコンビニの灯は
雑誌[NHK短歌] 2月号,兼題 [コンビニ]・佳作秀歌・(小島なお)
594 並木道にシャリシャリと鳴る自転車はまたも落葉を巻きこみしらし
雑誌『現代短歌』2月号[読者歌壇]・佳作・(倉林美千子)
593 ここに出す歌に非(あら)ずと叱られし京子先師のあの御(み)声はも
桃の会・1/8・席題[声]・会員票+石田圭介好評
592 門(かど)に立てし旗に初風待ちをれば見よ日の丸となりてはためく
桃の会・1/8・石田圭介+会員票
591 おもむろに医師はマスクを外したりやはり苦言かまさか手術か
『定年歌壇』 朝日系タウン紙 [定年時代]1月上旬号・(宮澤 燁)
590 新春のこの特別番組(とくばん)へ急ぎてや予定日前に初曾孫生(あ)る
NHKラジオ [新春おめでた文芸]1/3・生放送にFAX投稿・紹介あり
平成28(2016)年
589 陽光を浴びて育ちし唐黍にいま高周波「チーン」と鳴るまで
雑誌[NHK短歌] 1月号,兼題 [光]・佳作・(伊藤一彦)
588 隣室にこのごろ行かぬ二歳児は三面鏡を意識せるらし
雑誌[NHK短歌] 1月号,兼題 [部屋]・佳作・(小島なお)
587 横書きのワープロ文に「左記」とありてこの原文はけだし縦書き
雑誌『現代短歌』1月号[読者歌壇]・佳作・(内藤 明)
586 「胆嚢に癌か」と医師は診立てしが禁酒告げざり今日も燗せむ
桃の会・12/4・石田圭介評を参考に推敲
585 裏山の裏なる木々も色づきて我を迎ふる回り道かな
桃の会・12/4・石田圭介+会員評を参考に推敲
584 涼秋の朝刊にして理屈だち調べとぼしき短歌欄かな
雑誌『短歌』12月号・[角川歌壇]・佳作 (坂井修一)
583 風邪を防ぎ併せて舌禍をも抑へマスクは宵のくちにくたくた
NHK・平成27年度・全国短歌大会・佳作 共選(佐伯裕子+坂井修一)
582B秋空のロープウェイゆ見えし富士に声な惜しみそ韓(から)よりの人
桃の会・10/2・会員評を参考に推敲
582 玉将(ぎょくしょう)をいきなり口に隠したり詰み寸前となりし小童(こわらべ)
雑誌[NHK短歌] 12月号,兼題 [隠す]・佳作・(栗木京子)
581 五本指の靴下なれや十指どれもサボらでわれの老躯支ふる
雑誌[NHK短歌] 12月号,兼題 [本]・佳作・(小島なお)
580 鶏頭の写生に口を出したしよ「チューブの深紅を画布に絞れ」と
雑誌『現代短歌』12月号[読者歌壇]・佳作・(倉林美千子+内藤明)
579 白寿なりし末つ弟(おと)宮ご逝去にいよいよ離(さか)る御代昭和はも
桃の会・11/6・石田圭介評を参考に推敲
578 仏壇は転居以来の四十年を開(あ)けしままかな位牌増ししが
しののめ歌会,ふらんす堂通信150号(10/末)・東直子
577 修理員より受取りしモバイルを帰路の緑陰にて開(ひら)くなり
しののめ歌会,ふらんす堂通信150号(10/末)・佳作・東直子
576 当然のごとく説かるる「開(ひら)かれた皇室論」にいまだ戸惑ふ
しののめ歌会,ふらんす堂通信150号(10/末)・東直子
575 Eメールの相手つぎつぎ召されゆくあの世そろそろ圏内となれ
読売歌壇 10/31, (俵 万智)
574 糸雨は胡瓜の馬に茄子の牛に妻が遺しし小藪蘭にも
雑誌『現代短歌』11月号[読者歌壇]・佳作・(倉林美千子)
573B重篤の妻を離れて酔眼に選びゐたりき葬儀写真を
雑誌『短歌』10月号・題詠[写真]・(中地俊夫)
573 みごとなる桃詠みかねて偲ぶ師は初句の姿を説きまししかな
桃の会・9/4・好評+石田圭介肯定
572 かほどまで孫にかかはる生き物は人類のみよわれを含めて
雑誌『短歌』9月号・[角川歌壇]・秀逸(秋葉四郎)
571 空爆に散れる臓腑に蠅の来し記憶せめても蝶に替へたや
雑誌『短歌』9月号・題詠[記憶]・(中地俊夫)
570 巻紙に大夏蜜柑描かれて 「一個進呈仕り候」
雑誌[NHK短歌] 9月号,兼題 [紙]佳作秀歌 (小島なお)
569 烈士らを少年われに語りたまふ亡き師を併せ偲びまつるも
大東塾十四烈士七十一年祭(8/25)に献詠
568 瑠璃鶲(るりびたき)なりけむ沢の古小屋の窓をななめにのぼりたる青
雑誌『現代短歌』9月号[読者歌壇]・佳作・(内藤 明)
567 遅刻者の馳せ着くたび乾杯して窓に雷雨の同窓会なり
読売歌壇 8/8, 一席 (栗木京子)
566 両帝の御(み)跡慕ひてきし隠岐になほ紫陽花よ梅雨も戻りて
桃の会・8/7・石田圭介評などを参考に推敲
565 あへぐ身を坂に抜きたる揚羽蝶はあれよゆとりの舞ひに移れる
桃の会・8/7・石田圭介評などを参考に推敲
564 体温に迫る居間にて冷房をつけず偲べり硫黄島戦
『定年歌壇』 朝日系タウン紙 [定年時代]8月上旬号・宮澤 燁
558 飛魚の刺身の羽に酒場の灯鈍く映りて壱岐はるかなり
テレビ放送・8/14「NHK短歌」・歌題[海の生き物] (小島なお)
563 キャッチフレーズ「歯周病菌とたたかう」のわが原案は「闘ふ」としたき
しののめ歌会,ふらんす堂通信149号(7/末)・東直子・添削
562 遥かなり粉末ソーダ飲料のCM作りに汗だくの日々
しののめ歌会,ふらんす堂通信149号(7/末)・東直子
561 遠き日のハイボールまた流行りをり再び高度成長期かや
しののめ歌会,ふらんす堂通信149号(7/末)・東直子
560 そそぐ水をたちまちに干すこの墓碑の下には疾(と)うに渇かざる妻
雑誌[NHK短歌] 8月号,兼題 [水]佳作 (伊藤一彦)
559 わが傘の先のななめに減るわけは引きずるをりの角度なるべし
雑誌『現代短歌』8月号[読者歌壇]・佳作・(三枝浩樹)
558 飛魚の刺身の羽に酒場の灯鈍く映りて壱岐はるかなり
テレビ放送・8/14「NHK短歌」・歌題[海の生き物] (小島なお)
557B天動と思へてならず裏山へと夏至の夕日のり入る見て
桃の会・7/3 → 『桃の会だより』(26)に掲載。
557 杭先の亀に問ひたや睡蓮の池を見わたす心地いかにと
桃の会・7/3・会員選評あり。石田評=独特の発想だが……。
556 妻は疾うに「妙心道華(みょうしんどうか)信女」にて我が位牌には何と書かるるや
雑誌『短歌』7月号[角川歌壇]佳作(沢口芙美)
555 あぢさゐのをさなき毬にさす色のほのかにきざしとの曇るけふ
読売歌壇 6/20, (岡野弘彦) ※添削あり
554 地異つづく肥後を経てきし雨風に打たるる多摩の八重椿かな
読売歌壇 5/23, 三席・(栗木京子)
553 松風かはた潮騒かふるさとの族(うから)が家に目覚めゆきつつ
雑誌『現代短歌』6月号[読者歌壇]・佳作・(三枝浩樹)
552 齢闌(とした)くる掌(てのひら)なれど蛙子(かえるご)の群れを掬へばこそばゆきかな
桃の会・5/1・会員選評+石田圭介肯定
551 地震(ない)つづく肥後を豊後を経てきしか首都の新樹を揺する疾風は
桃の会・5/1・会員選評あり
550 ゆるらかに孔雀の羽のひらきしへ建国記念の日の日差しかな
しののめ歌会,ふらんす堂通信148号(4/末)・東直子
549 否(イナ)ヨ否(イナ)ヨてふ囀りのさなかにも肯(うべな)ふゆゑに噤めるもゐむ
しののめ歌会,ふらんす堂通信148号(4/末)・佳作・東直子
548 オバマ氏は知るや帝国日本案の「人種平等決議」否決を
しののめ歌会,ふらんす堂通信148号(4/末)・東直子
547 青あらしに和泉の木々は葉を返し君は二上山を指しにき
故・長谷川啓介君(同窓生)の仏前に献詠・4/25
546 大寒の動物園の食堂にて喉くぐらするカレーライスかな
雑誌『現代短歌』5月号[読者歌壇]・佳作・(三枝浩樹)
545 大顔のわれに似合はぬ鍔(つば)狭き帽子を買ひつ懲りずまに又
雑誌[NHK短歌] 5月号,兼題 [帽子]佳作 (佐佐木幸綱)
544 或る爺(じじ)が花咲爺になるまでの筋あやふやにわれは老けゆく
桃の会4/3(用賀神社にての初歌会)・好評歌に石田圭介添削
543 みまつりに併せ数へて由々しもよ郷の先師の五十五年は
4/3,大東神社、神武天皇二千六百年祭・塾創立七十七年祭・物故同志合同慰霊祭 (三村行雄之命五十五年祭)に献詠
542 極秘事も抱きて逝きしか郷友はかの原発の初期の要員
雑誌『短歌』4月号[角川歌壇]佳作(田宮朋子)
541 やつと来し次男夫婦を降り籠めよ三連休に向けて舞ふ雪
雑誌『短歌』4月号・題詠[雪]・(小見山輝)
540 逆引きの『広辞苑』第五版にて「サラダ」当たるに「ハム・サラダ」のみ
雑誌[NHK短歌] 4月号,兼題 [サラダ]佳作 (佐佐木幸綱)
539 数へ日にはおよそ相応(ふさ)はぬ音かなと又寝の床に雨垂れを聞く
雑誌『現代短歌』4月号[読者歌壇]・佳作・(三枝浩樹)
538 あさみどりの御製唱ふる体操を「余興」と詠みて叱られしかな
桃の会3/6・(中澤伸弘)
537 梅散らふ先師が家よここにての「桃」の歌会はけふをかぎりに
桃の会3/6・石田圭介評を参考に推敲
536 遠き日に「青畳よ」と歓喜せし拙居あちこち踏み怖づる今日
雑誌『短歌』3月号[角川歌壇]佳作(松坂 弘)
535 マスゲームを誇る国より来し雲か何やら秩序めきて覆へる
雑誌[NHK短歌] 3月号,兼題 [ゲーム]佳作 (栗木京子)
534 負けたりき妻に憑(つ)きたる脳腫瘍との闘病遂に三度(みたび)めにして
雑誌[NHK短歌] 3月号,兼題 [勝つ負ける]佳作 (染野太朗)
533 この旅のきはみぞ甲斐の湖畔なる冬紅葉より仰ぐ大富士
雑誌[NHK短歌] 3月号,兼題 [旅]佳作 (佐佐木幸綱)
532 詐欺らしき電話断つなり次男へと掛くればなんとそつくりな声
NHKラジオ文芸選評・1/20日放送・ (篠 弘)
531 干し布団をエイッと返して仰ぐ空に思へりわれは北半球人
雑誌『現代短歌』3月号[読者歌壇]・佳作・(三枝浩樹)
530 脛(はぎ)もほぼ埋まる落葉にはしやぐ児の成人の日までこの林あれ
桃の会2/7・好評作+石田圭介添削
529 寒明けのかがやきなれや枯れきりし柳の糸に透くる遠富士
桃の会2/7・好評作+石田評による推敲。→後日再推敲
528B あらたまの年の初めの参道の人波をゆくこの和みはも
雑誌『不二』二月号・[平成二十八年度・勅題「人」詠進歌集]に収録
528 原発に尽くしし人の病室ゆ旧電力に依る夜景見き
しののめ歌会,ふらんす堂通信147号(1/末)・東直子
527 天羽(あもう)君きみが魂(たま)こそ名のごとく天翔くるべし遥か銀河へ
しののめ歌会,ふらんす堂通信147号(1/末)・東直子
526 わが多摩の川原に仰ぐモノレールはいまだに未来ごつこめくなり
しののめ歌会,ふらんす堂通信147号(1/末)[未来]・東直子
525 妻の脳ははや極楽に遊びゐしか庭に廊下によろめきしころ
角川全国短歌大会⑦・題[楽]予選通過
524 奥多摩の河原の石にあらたまの年初めなる日の温みかな
桃の会1/10・好評作+石田圭介添削
平成27(2015)年
523 木の実降る音聞きをれば枝に跳ねてさらには隣る幹打つもあり
雑誌『短歌』28年1月号[角川歌壇]佳作(松坂 弘)
522 書く賀状に捺せばはしやげり引出しに十二年間ゐしゴム印の猿
朝日歌壇・12/21・一席 (佐々木幸綱)
521 休館と知らで来たりて返本を読みなほしをり傍のベンチに
雑誌[NHK短歌] 1月号,兼題 [休む]佳作秀歌 (染野太朗)
520 岸に鵜が羽ひろぐるは無為ならで油脂を除きて潜るためとぞ
雑誌『現代短歌』平成28年1月号[読者歌壇]・佳作・(阿木津 英)
519 降下への機窓に見えし紀ノ川をいま車窓より讃えつつ越ゆ
桃の会12/6・好評作+石田圭介添削
518 サングラスをあの鳥居まで許されよ踏みゆく砂利の照りかへす宮
雑誌[NHK短歌] 12月号,兼題 [薬]佳作秀歌 (栗木京子)
517 散薬の缶に添付の匙失せてコーヒースプーンゆゑに効かずや
雑誌[NHK短歌] 12月号,兼題 [薬]佳作 (染野太朗)
516 妻のめでし小藪蘭また咲き初めぬ服喪の日より丁度十(と)たびを
雑誌『現代短歌』12月号[読者歌壇]・佳作・(阿木津 英)
515 「身ノ罪ヲ突キ上グルゴト腸カメラ」 と詠み起こししがあとは麻酔下
桃の会11/1・話題作+石田圭介肯定
514 枇杷の花にまた思ふなり遠き日の質屋の戸口にてのためらひ
桃の会11/1・好評作+石田圭介肯定
513 『風立ちぬ』の「生きめやも」なる本来は「生きざらめやも」か、納得
しののめ歌会,ふらんす堂通信146号(10/末)・東直子
512 バイトてふ孫立つ売場覗ききてよくまはるなり今日の昼酒
しののめ歌会,ふらんす堂通信146号(10/末)・東直子
511B 昼の瀬に群れゐし鮠(はや)はいま腹を光らせてゐむ最大満月(スーパームーン)に
桃の会10/4・好評作+石田圭介添削/[桃の会だより]23号
511 「ともすれば巷の人にならんとす」と師は立ちましき大き夕日に
しののめ歌会,ふらんす堂通信146号(10/末)・東直子
510 君が代をキミギャーヨーと外語風にあたら熱唱せり若手歌手
雑誌[NHK短歌] 11月号,兼題 [手]佳作 (佐々木幸綱)
509 動物園にて気づきたり木登りを好まぬ猿も少なからずと
雑誌『現代短歌』11月号[読者歌壇]・秀作・(阿木津 英)
508 除草剤にて駄目押しをされゐしにもう生えをりぬ小さき穂つけて
雑誌『短歌』10月号[公募短歌館]佳作(松平盟子)
507 裏に来し夏鶯をホーケテミヨ・惚(ホー)ケテミヨと聞くわれは喜寿
雑誌『現代短歌』10月号[読者歌壇]・佳作・(阿木津 英)
506 荒れ庭の虫の音褒めてやらざれば凡そ隣家に移りたるらし
桃の会9/6・石田圭介肯定
505 赤とんぼ汝(な)が赤き眼に見る空もやはり青きか秋めける今日
桃の会9/6・石田圭介選
504 統制下にみ声抑へてわが先師語りたまひき十四烈士を
大東塾十四烈士七十年祭(8/25)に献詠
503 時代劇の或る殺し屋が梅雨冷えにおでん煮てゐきそを真似てをり
雑誌[NHK短歌] 9月号,兼題 [料理]佳作 (染野太朗)
502 片蔭に沿ひつつ漕げば向かうよりけだし同類らしき自転車
雑誌『現代短歌』9月号[読者歌壇]・秀作・(阿木津 英)
501 このひまはり根元にプラグ差し込まばいささか電気流しさうなる
朝日歌壇8/10 (永田和弘)
500B 人ならば童がほどか小振りなるかまきり這ふよ隠居家の塀
桃の会8/2・石田圭介肯定
500 多摩の丘に居付きてこそと大虹の架かる都を見はるかすなり
桃の会8/2・好評歌
499 「ワカリヤスウ詠モトスルカラ軽ウナル」と諭しくるるよ川柳詩性派
しののめ歌会,ふらんす堂通信145号(7/末)・東直子
498 覗きたる川柳会にて俳句との決別談の手馴れしを聞く
しののめ歌会,ふらんす堂通信145号(7/末)・東直子
497 「咳一ッきこえぬ中を天皇旗」を名川柳と認めつつ咳く
しののめ歌会,ふらんす堂通信145号(7/末)・東直子
496 母親の出先問はれし幼な子の「あたまやさーん」は美容院らし
雑誌[NHK短歌] 8月号,兼題 [におう]佳作 (栗木京子)
495 動物園にて鼻つまむ若きらに防臭マスクを貸さば稼げむ
雑誌[NHK短歌] 8月号,兼題 [におう]佳作 (染野太朗)
494 東京の貯水湖畔に居つけども雲湧く今日は南海を恋ふ
雑誌[NHK短歌] 8月号,兼題 [雲]佳作 (佐々木幸綱)
493 ツギツギニ死ンデルサケニ今度コソ来イてふ電話同窓会より
読売歌壇 7/20, (俵 万智・二席)
492 和歌ノ浦の芦辺のここにかつて師と酔ひて夕日に染まりたるかな
雑誌『現代短歌』8月号[読者歌壇]・佳作・(秋葉四郎)
491 湿り傘をなほも突きゆく梯子酒にお咎めあるな梅雨の月読(つくよみ)
桃の会7/5・好評作を推敲
490 はみ出でて隣家に障(さや)る黒竹にお褒めありけり「風情ッぽいよ」と
桃の会7/5・石田圭介添削
489 葉陰なる粒に思へりわが歌はこの青桃のままに終はるかと
桃の会・高鷲句会・6/29・会員評+自選
488 慕ひきし妹背の歌碑に謹めば囀れるかなせせらげるかな
桃の会・高鷲句会・6/29・会員評+自選
487 南西に雲湧き出でてかがやきぬ帰省予定を立てよ決めよと
桃の会6/7・好評を参考に推敲
486 戸に障(さわ)る紫陽花の毬幼なければ剪るに剪られず疾く笑へかし
桃の会6/7(会報21掲載作を推敲)
485 「もちますね」「ちりさうもない」「あきれた」と四五人通る八重桜かな
雑誌『短歌』7月号[公募短歌館]佳作(沢口芙美)
484 マンションのあのベランダに逆さまに吹きあげらるる鯉幟はや
雑誌『現代短歌』7月号[読者歌壇]・佳作・(秋葉四郎)
483 見かけたる「タケノコ掘ルナ」の立札にしてはいささか狭き藪かな
読売歌壇 5/18, (俵 万智)
482C わが庵(いお)を斜めに昇る春の月はいま照らしゐむ花宴をも
桃の会4/5(会報21に掲載作を推敲)
482B わが鄙(ひな)の駅の名こそは超弩級を連ねて「武蔵大和」なりけり
桃の会4/5(会報21に掲載)
482 冬眠より覚めつつ浮かびきし亀を待ちうけくれし紅き椿は
雑誌『現代短歌』6月号[読者歌壇]・佳作・(秋葉四郎)
481 はやばやと咲く栴檀(せんだん)の花のもと浄土にさぞや父子の再会
義兄の満中陰・5/4に献詠
480 「喜寿もなほ生徒会長夏帽子」なりしが逝きぬ初夏を待たずに
郷里の同窓生・長谷川圭介君の逝去(4/27)に献詠
479 きちゃうめんに生ききりしうへ彼岸なるお中日にこそ逝きし人はも
義兄の逝去に献詠
478 きさらぎの雲ゆ日の矢の射すあたり猫は恋せむ雛は孵(かえ)らむ
桃の会3/1・話題作
477 たそがれに見掛けて寄れば垣内(かきつ)より「白山吹」と応(いら)へありけり
桃の会5/3・好評作
476 滑り台に仰向き・俯き・逆さまを繰返す子らゐて日永なる
桃の会5/3・好評作
475 誕生日は二(ニャン)・二(ニャン)・二(ニャン)ンコの日となれり七十七の寅年の爺
しののめ歌会,ふらんす堂通信144号(4/末)・東直子
474 敷石の踏まれ踏まれて艶めくを千客と踏む万里長城
しののめ歌会,兼題[千]ふらんす堂通信144号(4/末)・東直子
473 生みし島をさらに記(しる)してほしかりき千三百年前の古事記に
しののめ歌会,兼題[千]ふらんす堂通信144号(4/末)・東直子
472 この池の処々(しょしょ)に残れる薄氷(うすらい)は叢雲(むらくも)めくか鯉や鮒には
雑誌『短歌』5月号[公募短歌館]佳作(森山明美)
471 次男よりポケット電話に飛び飛びの声朗らなりまた転職か
雑誌[NHK短歌] 5月号,兼題 [飛く]佳作 (永田和宏)
470 想像の炎にわれを委ねつつ妻の火葬に耐えてゐたりき
テレビ放送・5/3「NHK短歌」・兼題[われ・私] (佐々木幸綱)
469 一年(ひととせ)めの桃のつぼみに偲ばしや一筋の恋一筋の歌
山川京子先生一年祭に献詠・3/15
468 空港にてまた思ふなりこれほどの音をたてねば人は飛べぬかと
雑誌『現代短歌』4月号[読者歌壇]・秀作・(秋葉四郎)
467 若き友がこの瀧本に言ひとめし 「ワレ一滴ノシヅクナリ」 はも
雑誌『不二』二月号・[平成二十七年度勅題「本」詠進歌集]に収録
466 咳きながら活字植ゑゐし職人はその電子化を見ずに逝きしか
読売歌壇 2/16, (栗木京子)
465 抽斗(ひきだし)に十二年ゐしゴム印の羊よ覚めて飾れ賀状を
しののめ歌会,ふらんす堂通信143号(1/末)・東直子
464 両鼻に管(くだ)を迎へて眠りゐし友に儘(まま)よと書く賀状なり
しののめ歌会,ふらんす堂通信143号(1/末)・東直子
463 雨宿りは親子孫(おやこまご)かと案じつつ停車禁止のトンネルを過ぐ
しののめ歌会,兼題[家族]ふらんす堂通信143号(1/末)・東直子
462 色鳥よ覗かば覗けわれら乗るケーブルカーは人の籠なる
雑誌『短歌』2月号[公募短歌館]佳作(米川千嘉子)
461 「花水漬く路面レールの凹みかな」と詠みしところにいま枯葉浮く
雑誌『短歌』2月号・題詠[線路]・(島崎榮一)
460 路地にまで来る不用品回収車はいつの日行くや核被災地へ
雑誌[NHK短歌] 2月号,兼題 [行く]佳作 (小島ゆかり)
459 偲ばばや去年(こぞ)正月の席題を「集ふ」と宣(の)らしましし先師を
桃の会1/11・石田圭介氏の選評を参考に結句を推敲。
458 拡声器「一番ホーム」と告ぐれどもこれ一本ぞわが小駅には
雑誌『現代短歌』2月号[読者歌壇]・佳作・(栗木京子)
457 過去形に詠む紀ノ国はなべて夏海山空の青きふるさと
テレビ放送・1/4「NHK短歌」・特選三席(小島ゆかり)
平成26(2014)年
456 かつてこのモノレールより見し多摩の芋畑また黍畑はも
雑誌『短歌』1月号[公募短歌館]佳作(米川千嘉子)
455 この朝に八手の花のさやけきは昨夜(ゆうべ)の月の名残りなるべし
桃の会 12/7, 好評作。石田圭介氏の批評を参考に、上の句を変更。
454 隠居家にけふ出す電気絨毯にかつて六人(むたり)ぞ座も決まりゐて
桃の会 12/7, 好評
453 自転車のライトに映ゆる霧雨を抜けて戻りぬ無灯の家に
雑誌『短歌』12月号[公募短歌館]佳作(花山多佳子)
452 捩ぢりたる把手(とって)摘まみて提(さ)げをれば身悶へしつつオルゴール鳴る
テレビ放送・12/14「NHK短歌」・特選二席(斉藤斎藤)
451 芽と出るか土に戻るか裏山を抜けきるまでに踏む木々の実は
桃の会 10/2, 多点+石田会長評を参考に推敲
450 露草よ遠き御代には後朝(きぬぎぬ)の文(ふみ)使ひをも仰ぎ見たるか
しののめ歌会,兼題[朝]ふらんす堂142号(10/末)・東直子
449 「あさみどり」の御製唱ふる体操もほどよくありて宴(うたげ)たけなは
しののめ歌会,ふらんす堂142号(10/末)・東直子
448 鳥どちの鳴き真似のこと知りてより朝床に聞くホーホケキョはも
しののめ歌会,兼題[朝]ふらんす堂142号(10/末)・東直子
447 ノートパソコン閉ぢて車窓の田毎(たごと)なる刈入れどきをしばし楽しむ
読売歌壇 10/27, (俵 万智)
446 大入日かつてハワイに西安にアドリア海にも惜しみたるかな
雑誌『短歌』11月号[公募短歌館]佳作(今野寿美)
445 茹であげし枝豆をすぐ扇ぎつつ「水掛けよ」てふ説に惹(ひ)かるる
雑誌『短歌』11月号[公募短歌館]佳作(来嶋靖生)
444 独り注ぐビールの泡の耐えしのち底より一つのぼれるも消ゆ
雑誌[NHK短歌] 11月号,兼題 [泡]佳作 (斉藤斎藤)
443 垣根越しの鉄砲百合に隣家より陳謝ありけり愛でてをりしに
雑誌『現代短歌』11月号[読者歌壇]・秀作・(栗木京子)
442 不意の客に前ほど錯乱せぬ孫は対応不全気質(アスペルガー)のゆるむきざしか
雑誌『短歌』10月号・題詠[きざす],(松坂 弘)
441 仏壇の妻も加はれ友三人(みたり)寄りきて尽きぬ昔語りに
雑誌『現代短歌』10月号[読者歌壇]・秀作・(栗木京子)
440 雨音に覚めて友らを憂ひをり山を負ふ家川近き家
桃の会 9/7, 石田会長ほか選
439 潮溜りに閉(とざ)されたると気づかずや藻をくぐりては遊ぶ小魚
現代短歌新聞・9/5号,[読者歌壇](筒井早苗)
438 いま目立つ眉のかたちは眉間(みけん)へと描き込まれをり世相ゆゑにか
雑誌『短歌』9月号・題詠[眉],(松坂 弘)
437 戻りつく単線駅はこのところ夜半に降りても草いきれかな
桃の会8/3, 石田会長評+合評により推敲
436 四十キロの凡そ半ばは地下を来てあんぐり仰ぐ新巨塔かな
雑誌[NHK短歌] 9月号,兼題 [地下]佳作 (斉藤斎藤)
435 橋の下に逃込みてなほ釣りながら電話するなり「行くぞ夕立」
朝日歌壇 ,8/18,一席 (佐々木幸綱)
434 聞くやすぐ薄切りゴーヤと梅肉を和(あ)えにかかれる吾は紀州びと
読売歌壇 8/12, (俵 万智)
433 沖縄の玉砕告ぐるラジオにて童の聴きし「海ゆかば」はも
『定年歌壇』 朝日系タウン紙[定年時代]8月上旬号 (宮澤燁 )
432 混血の肌濃き孫は眠りたりプール開きに耐えて戻りて
雑誌『短歌』8月号・題詠[肌],(久々湊盈子)
431 葬儀社に死装束を拒み切つてネグリジェとしき妻の納棺
雑誌[NHK短歌] 8月号,兼題 [切る]佳作 (斉藤斎藤)
430 まだ訪はぬ大河メコンを思ひつつ仕舞ふ加湿器梅雨めける今日
雑誌[NHK短歌] 8月号,兼題 [家電製品]佳作 (小島ゆかり)
429 取り入れし夜具に寡夫(やもお)の身をのべて残暑の夜を眠りなむとす
読売歌壇 7/14, (岡野弘彦)
428 列車にて電光文字のニュースよりも窓這ふ雨の筋に厭きざる
雑誌『現代短歌』8月号[読者歌壇]・佳作・(橋本喜典)
427 葉隠れの青き桃の実見るにつけ熟(う)れの極みに逝きましし師よ
『桃の会だより』17号,「献詠集」に掲載
426 現(うつ)し身の京子師坐(ま)さぬこの部屋に現(うつ)つ進みぬ五十日祭
『桃の会だより』17号,「献詠集」に掲載
425 初句こそと常々諭したまひたる師への献歌を詠み起こせざる
『桃の会だより』17号,「献詠集」に掲載
424 覚めてまた初句の品位を説かれませ昼寝あそばすごとき御かばね
『桃の会だより』17号,7/6・山川京子主宰を偲ぶ歌会
423 門(かど)に咲く桃くぐりきて由々しやな御(み)枕辺にも献花一枝(ひとえだ)
『桃の会だより』17号,「献詠集」に掲載
422 師の訃なり受話器もどして目つむれば緋桃(ひもも)にそそぐ昨夜(よべ)よりの雨
『桃の会だより』17号,「献詠集」に掲載
421 清掃の手順なるべし公園に残る花みな叩(はた)き落とすは
現代短歌新聞・7/5号,[読者歌壇](筒井早苗)
420 石塀にヨイショと干しし敷布団をすぐさま捲(まく)る青嵐かな
読売歌壇 6/16, (栗木京子)
419 拙宅の八手の花を矍鑠(かくしゃく)の徴(しるし)とせしが遂にしぼみぬ
雑誌『現代短歌』7月号[読者歌壇]・佳作・(橋本喜典)
418Bこの丘に起こる風こそ吹き渡れ霧吹き払ふ青嵐なれ
影山正治之命三十五年祭(5/25,大東神社)に参列・献詠。大東会館『道の友』6/10号《祭典報告》に掲載
418 庭の薔薇に雷鳴、急雨、雹(ひょう)ののち風薫るなり事なきがごと
桃の会6/1, 好評作 → 「句会報」
417 花園につぎつぎ来たる春日傘どれもたちまち色褪するがに
現代短歌新聞・6/5号,[読者歌壇](筒井早苗)
416 涅槃図の釈迦の御身にまとはるる布は木綿を措(お)きて思へず
雑誌『短歌』6月号[公募短歌館]佳作(川野里子)
415 街角に配るテイッシュに手を出しぬ今日の風には花粉たつぷり
雑誌[NHK短歌] 6月号,[ラジオ文芸選評] 佳作 (篠 弘・添削)を参考に推敲
414 山吹の家見るにつけ歌詠みの女人(によにん)住むやとこころ弾(はず)むる
桃の会5/4, 石田圭介氏好評 → 「句会報」
413 思ひきや月の初めの日曜の集ひのたびに師を偲ぶとは
桃の会5/4, 石田圭介氏評をもとに推敲
412 ファインダーに孫娘けふ余所余所し卒業式ののちの校庭
雑誌[NHK短歌] 5月号,テーマ [卒業式]佳作 (佐伯裕子)
411 在りし日の妻を瞬時に思ひけり洗濯挟みに指を嚙まれて
雑誌[NHK短歌] 5月号,兼題 [指]佳作 (永田和宏)
410 能弁の総理なるかな祖父どのは「あれ」と「なに」にてほぼ済ませしに
雑誌[NHK短歌] 5月号,兼題 [あれ]佳作 (斉藤斎藤)
409 都知事選の顔顔顔の掲示板を爺さんたちの双六と見る
雑誌[NHK短歌] 5月号,兼題 [顔]佳作 (小島ゆかり)
408 石塀に音なく積もる淡雪はけだし故郷の妻が墓碑にも
雑誌『現代短歌』5月号[読者歌壇]・佳作・(橋本喜典)
407 芽柳を透く夕月のおぼろにてわれの昭和も遠くはかなし
読売歌壇 4/15, (岡野弘彦)添削
406 子ら去りしジャングルジムに夕東風(ゆうごち)の強きが鳴りぬ子らは湯船か
雑誌『短歌』4月号[公募短歌館]秀逸(川野里子)
405 つかのまの天国なりし喜寿の身をこの世にもどす観覧車かな
NHK学園(くにたち)4/8の受講を参考に推敲
404 (空番 → 424へ移行)
403 コンビニの前に踏まるる年玉の袋を指して「空(から)だね」と孫
雑誌[NHK短歌] 4月号,兼題 [空]佳作 (斉藤斎藤)
402 誕生日迫りて急遽再開す去年習ひしシルバーストレッチ
雑誌『現代短歌』4月号[読者歌壇]・佳作・(水野昌雄)
401 春めくやビルを逆さに映したる町の川にも浮子(うき)流れきて
桃の会・3/2, 石田圭介選・山川京子好評 → 「句会報」
400 「です」 といふ語尾を 「でさッ」 てふ今風の走りなりしか田中角栄
雑誌『現代短歌』3月号[読者歌壇]・佳作・(水野昌雄) ※上記=投稿原歌
399 次男てふ詐欺の電話をあしらひて断たせてしばし夜時雨を聞く
雑誌『現代短歌』3月号[読者歌壇]・佳作・(水野昌雄) ※上記=投稿原歌
398 仲人のわれより先に世を去りし汝が墓前なり汝が妻と来て
桃の会・2/2, 石田圭介選・山川京子好評 → 「句会報」
397 外つ国ゆ来てわが孫を産み育てやがては祖母となるいのちはも
雑誌[NHK短歌] 2月号,兼題 [外国の人]佳作 (斉藤斎藤)
396 遠き日にチョコを秘めゐし銀紙のいま無造作にくるむあれこれ
雑誌[NHK短歌] 2月号,兼題 [無]佳作 (小島ゆかり)
395 モノレールも先端にこのワイパーの備へありしか時雨ゆく多摩
雑誌『現代短歌』2月号[読者歌壇]・佳作・(水野昌雄)
394B賀状への或る添へ書きを悔みつつ年始めへと目覚めたるかな
桃の会・1/12・山川京子添削
平成25(2013)年
394 電線にてしやべりにしやべる鳥どちの声は受話器にまじりこまずや
雑誌[NHK短歌] 1月号,兼題 [声]佳作 (小島ゆかり)
393 寺の池の諸(もろ)の卵を呑む蛇を語りて和尚「裏も修羅やで」
雑誌『現代短歌』1月号[読者歌壇]・佳作・(水野昌雄)
392 冬月夜わが大腸は昼すぎに内視鏡もて照らされしかな
読売歌壇 12/10, 一席 (栗木京子)
391 ながき夜の乃木大将の詩歌集つひに辞世に至りたまひぬ
桃の会・12/1, 山川京子・添削 → 「句会報」
390 いくたびも輪を広げては見せながら鳶は岬を離れざるらし
桃の会・11/3, 山川京子・添削→ 「句会報」
389 ひそと咲く妻が遺愛の小藪蘭服喪の日より八たびめとなる
桃の会・11/3, 山川京子選 (添削)→ 「句会報」
388 受話器より「ママはパートで姉ちやんはバイト」と弾む孫の応答
雑誌[NHK短歌] 11月号,テーマ [アルバイト]佳作 (佐伯裕子)
387 使用料の要る川原にて都辺の夏惜しむなり三千円分
新刊雑誌『現代短歌』11月号[読者歌壇]・佳作・(水野昌雄)添削
386 神宮の遷御ノ儀まで二刻(ふたとき)のここ東京に虹かかりけり
桃の会・10/6, 山川京子評を参考に推敲
385 吊革に身をよぢり見る名月に運転席は背すぢ伸びゐむ
桃の会・10/6,(山川京子添削) 評=ユニークな名月詠
384 幻の十三回忌けふなりと突き損ねたる心臓に詫ぶ
現代短歌新聞・10月号,[読者歌壇](倉林美千子)
383 二重ガラス「しかも真空」とて誇るペンションなれや聴けぬ夜蛙
雑誌『短歌』10月号・題詠[硝子](志垣澄幸)
382 蟬しぐれの並木にかかり畏友との清話たちまち大声となる
桃の会・9/1, 山川京子添削→会報に収録へ
381 子蜥蜴の走りこみたる石垣の奥にさぞかし安らぎの窪(くぼ)
現代短歌新聞・9月号,[読者歌壇](倉林美千子)
380 ガラス越しに腹を小突きて追ひやりし家守はどこに雨を宿るや
読売歌壇 8/26, (栗木京子)添削
379 対応不全気質(アスペルガー)の児は爺われにまた乞へり詰将棋なる難問題を
雑誌『短歌』9月号[公募短歌館]佳作(佐伯裕子)
378 波立てる青田の脇を駆け出でて六十余年を止まらざりけり
全日本短歌大会(34)、優良賞,(日本歌人クラブ)
377 余所(よそ)の国と余所の国との球(たま)蹴りの死闘のテレビ鷹揚に見る
全日本短歌大会(34)、優良賞,(日本歌人クラブ)
376 虹のあの下に始めし所帯にて夢もいささかゑがきたるかな
読売歌壇 ,8/13, (俵 万智)
375 妻逝きて不要となりし手摺へと小型ラジオを吊す用便
NHK・Eテレビ9/8放送・兼題 [トイレ・便所]・特選三席(斉藤斎藤)
374 必要とあらばただちに戦はむてふ国々にわれら隣れる
読売歌壇 ,8/5, (岡野弘彦・三席)
373 鳴ききそふ蝉は知らじな去(い)にし日のこの桜木の花の盛りを
桃の会8/4, 山川京子添削→会報に収録へ
372 ひまはりに背伸びの孫を抱きあげて触れさせにけり花に蕾に
桃の会8/4, 石田圭介選、多点賞、山川京子添削→会報に収録へ
371 五月雨の道のひとところ朱に染めて石榴の花はおよそ散りたり
読売歌壇 ,7/29, (岡野弘彦・添削)
370 この国には心をこめて偽せ物を縫ふ人あるを知る旅愁かな
読売歌壇 ,7/23, (俵 万智・添削)
369 投稿のわが癖字をもウフフフと笑はれしかな河野裕子さん
雑誌[NHK短歌] 8月号,兼題 [笑う]佳作 (永田和宏)
368 いまごろは奥美濃に歌碑除幕かとつつしみ仰ぐ梅雨の西空
桃の会7/7, 山川京子容認→会報に収録へ
367 雨脚(あまあし)のかく激しきを信長ら桶狭間へと駆けに駆けしか
桃の会7/7, 山川京子容認・石田圭介好評→会報に収録へ
366 荼毘(だび)のをりは代田(しろた)に雨の輪を見しが四十九日に苗そよぐなり
読売歌壇 ,7/1,(小池 光)一席
365 犬小屋を出ざる老躯を撫でをればがくんと逝きき或る除夜にして
雑誌[NHK短歌] 7月号,兼題 [犬or猫]佳作 (小島ゆかり)
364 身を棄ててオフィス閉ぢしに今も間々「社長」と呼ばるるたびにをののく
『定年歌壇』 朝日系タウン紙[定年時代]6月上旬号 (宮澤燁 ) ※選評=複雑な心情。
363 ふるさとの楠若葉また仰ぐわれに已(や)むに已まれぬ日のありしかな
桃の会6/2, 山川京子・石田圭介氏の指摘部分を、後日推敲。
362 めぐりきし富士の麓の五つめの湖(うみ)にひときは風薫るなり
桃の会6/2,(山川京子・容認)→会報に収録へ
361 鶯ぞかつて「裏に」と嬉しげに告げきし妻も仏壇に聴け
雑誌『短歌』6月号[公募短歌館]秀逸(沢口芙美)
360 目覚めつつ脳は探れり六十年前の住まひの暗き厠(かわや)を
雑誌[NHK短歌] 6月号,兼題 [めざめ・寝起き]佳作 (斉藤斎藤)
359 いさぎよく桜吹雪ける都辺はつむじ風にも花の色見る
桃の会4/7,(山川京子添削)→会報に収録
358 翼下なるただ白のみのひとときに大雪原を思へわが脳
雑誌[NHK短歌] 4月号,兼題 [雪原]佳作 (佐伯裕子)
357 孫の手を見つけし孫は己(おの)が背を掻きに掻くなり身をくねりつつ
読売歌壇 ,3/18,(小池 光)三席
356 わが生(せい)は栄えの肉弾三勇士の六年(むとせ)ののちの午前五時とぞ
桃の会3/3,(石田圭介指導による推敲)→会報に収録
355 背に泥を撥(は)ねて駆けたる頃はやと雪解(ゆきげ)の道にしばしたたずむ
桃の会3/3,(山川京子添削)→会報に収録
354 旅すてふ神をこはごは探るなり旧十月の機窓の雲間に
雑誌『短歌』3月号[公募短歌館]佳作(松平盟子)
353 「降伏ハ貴様ラ銃後ノ軟弱ノセヰゾ」と復員教師の鉄拳
雑誌[NHK短歌] 3月号,兼題 [鉄]佳作 (花山多佳子)
352 みぞれきし園の小枝に並びたる梅の蕾に見ゆるくれなゐ
桃の会2/3,(山川京子添削)→会報に収録
351 夏ものをなほ着重ねて木枯に立向かはれし師を忘れざり
桃の会2/3,(山川京子指導にて推敲)→会報に収録
350 勝利棋士の照れて語れる「指運(ゆびうん)」は辞書に見えざり業界用語か
雑誌『短歌』2月号・題詠[指],(楠田立身)
349 椿の葉に回想はまた紀(き)の祖母が刻み煙草を巻きて喫ふさま
雑誌[NHK短歌] 1月号,兼題 [巻く]佳作 (花山多佳子)
348 思はざり寡夫(やもお)となりて冬の日におのれひとりの布団干すとは
読売歌壇 ,1/14,(岡野弘彦)
347 鎮守への初詣にも自転車につい施錠して吾(あ)は世俗びと
桃の会1/13(山川京子・添削) 『桃の会だより』掲載
346 あまた残る柚子は初日に照り映えて過(よ)ぎる鴉の余所(よそ)行きのこゑ
桃の会1/13(山川京子・添削) 『桃の会だより』掲載
平成24(2012)年
345 雲くぐる月ゆ見ゆるか地球のここを這ふ台風の白き渦巻
雑誌『短歌』1月号[公募短歌館]佳作(松平盟子)
344 亡妻の領域なりし天袋に「志」「内祝」など箱入りのまま
雑誌[NHK短歌] 1月号,兼題 [袋]佳作 (花山多佳子)
343 原因ノ花粉ガ別種ニカハルコロと眼科つれなし新症状に
NHK全国短歌大会(平成24年度)・兼題[新]・入選
342 下校児の嬲(なぶ)りを止(と)むるわれもまたかつてはいびりいびられしかな
NHK全国短歌大会(平成24年度)・入選
341 夕月ゆいま見下ろさば星空に地球昇るか青く大きく
NHK全国短歌大会(平成24年度)・入選
340 観察の暗き視界に豆球めくあの太陽にわれら依るのか
NHK全国短歌大会(平成24年度)・入選
339 「根回し」は詩語に非ずと美しき眉をしかめて忌む講師はも
現代短歌新聞・12月号,[読者歌壇](橋本喜典)
338 ロープくだる実演にては掌(てのひら)に火傷せしよとOB隊員
雑誌[NHK短歌] 12月号,兼題 [ライブ]佳作 (佐伯裕子)
337 たそがれの岸にたたずむ少年とかがむ少女に過ぎし五十年(いそとせ)
読売歌壇 ,11/13,(岡野弘彦・添削)+推敲
336 真夜に降る木の実ありけり乗越しし駅ゆ林を抜けて戻るに
桃の会11/4(山川京子・添削) 『桃の会だより』掲載
335 花水木のもみぢせる葉は逆光に映えていまにも炎立(ほむらだ)たむか
桃の会11/4(山川京子・添削) 『桃の会だより』掲載
334 平成の茄子(なす)と胡瓜(きゅうり)の牛馬にも正午迫れり終戦記念日
雑誌『短歌』11月号[公募短歌館]佳作(今野寿美)
333 御伽衆(おとぎしゅう)なりし板坂卜斎(ぼくさい)の血筋ゆゑにかわが助言癖
雑誌[NHK短歌] 11月号,兼題 [坂]佳作 (来嶋靖生)
332 小島への砂洲(さす)ひたしゆくさざ波を見下(おろ)してなほ噤む再会
桃の会10/7(山川京子・石田圭介・添削)
331 わが市にもなほ残るてふ蝶道(ちょうどう)へと向かふか揚羽ゼブラゾーンを
雑誌『短歌』10月号[公募短歌館]佳作(今野寿美)
330 風狂かやむなき仕儀か歩道橋の長き手摺を渡るででむし
雑誌『短歌』10月号・題詠[道]二席?(島崎榮一)
329 朝顔のいづれの色も底つ辺の白よりにじみ出でにけるかな
桃の会9/2・山川京子添削・(石田圭介氏肯定)・『桃の会だより』掲載
328 だしぬけに逆剃りなすは理容師の一身上に何ぞありしか
雑誌『短歌』9月号・題詠[髪]入選 (島崎榮一)
327 はしやぎゐし孫は去りたり濡縁に日蝕観察眼鏡のこして
雑誌[NHK短歌] 9月号,兼題 [眼]佳作 (来嶋靖生)
326 沖縄に惹かれゐし友あの世でもゴーヤチャンプルにて晩酌か
桃の会7/1・石田圭介氏より肯定評・『桃の会だより』掲載
325 松風かはた潮騒か紀の国の宿に耳より覚むる朝床
桃の会5/6・(山川京子・添削)・『桃の会だより』掲載
324 小綬鶏(こじゅけい)のチョットコイには取りあはず裏山抜けて望む遠富士
桃の会4/1,最多点・ 『桃の会だより』掲載
319 すめらぎの遠つ国より還りましし明くる今朝なる金環食はも
桃の会6/3・(山川京子・添削)・『桃の会だより』掲載
323 「軽過ぎ」との歌評に遭へりあらためて齢(よわい)七十四は重荷なる
雑誌『短歌』7月号[公募短歌館]佳作(米川千嘉子)
322 「春月やここで先生さやうなら」と弔ひてより八年めぐりつ
雑誌『短歌』7月号[公募短歌館]佳作(花山多佳子)
321 馬方は荷馬車後部にふざけ乗るわれら童を怒鳴り散らしき
雑誌『短歌』6月号・題詠[馬]四席?(槇弥生子)
320 茶どころの端(はし)に居つきてなごみきしに活断層のほぼ真上とや
『定年歌壇』 朝日系タウン紙[定年時代]6月上旬号 (宮澤燁 ・添削)
319 すめらぎの遠つ国より還りましし明くる今朝なる金環蝕はも
桃の会・平成12/06(山川京子・添削)・『桃の会だより』9号に掲載
318 茶どころの端(はし)に居つきてなごみきしに活断層のほぼ真上とや
現代短歌新聞・6月号,[読者歌壇](三浦槇子)
317 雨雲は東へ急くも竹の葉は西に散りをり地変おこるな
読売歌壇 ,5/28,(栗木京子)
316 卒業の袴の群れを世間へと追ひ散らすなり今日のビル風
雑誌『短歌』6月号・題詠[別れ]入選(喜多弘樹)
315 駅員の苦笑を前にポケットといふポケットを探る酔漢
雑誌[NHK短歌] 6月号,兼題 [駅]佳作 (佐伯裕子)
314 日永(ひなが)とはこれかと知りき萎(な)ゆる妻をデイケアバスに託したるころ
桃の会5/6(山川京子・添削)・『桃の会だより』掲載
313 山峡を抜ければ母郷さしあたり手ごころめける薄霞かな
現代短歌新聞・5月号,[読者歌壇](三浦槇子)
312 先端ははや霙(みぞ)るるか突堤をふり返りつつ戻りくる猫
雑誌[NHK短歌] 5月号,ラジオ文芸選評・佳作 (篠 弘)
311 むかし父は口喧(やか)しく弟子衆に「漆は塗るな引け」と説きにき
雑誌[NHK短歌] 5月号,兼題 [塗る]佳作 (花山多佳子)
310 どくだみも枯るるがままの荒れ庭に念を押すなり年の瀬の雨
雑誌『短歌』4月号[公募短歌館]佳作(久々湊盈子)
309 跳返る大型絵本を押しひらくたびに童の出会へるは何
雑誌[NHK短歌] 4月号,兼題 [跳ねる]佳作 (佐伯裕子)
308 除夜の鐘に思はるるなり隠居家へ還りくるもの還りこぬこと
雑誌[NHK短歌] 4月号,兼題 [家]佳作 (来嶋靖生)
307 大君のご快癒祈る記帳所に行き交ふ御民(みたみ)なべて声なく
桃の会3/5(山川京子・添削)・『桃の会だより』掲載
306 逆さまに切手貼りたき奴なれどここはこらへて斜め程度に
雑誌『短歌』年3月号・題詠[切手]入選(小林幸子)
305 原発の設計員とも疑惑社の監査役ともあなや同窓
雑誌『短歌』年3月号[公募短歌館]佳作(栗木京子)
304 これがまあわが晩年か湯婆(たんぽ)までもプラスチックに化け尽くしたる
雑誌[NHK短歌] 3月号,兼題 [年]佳作 (来嶋靖生)
303 立春の月をめでつつわが影を歩まするなり丘の庵(いおり)へ
桃の会2/5(石田圭介肯定/山川京子・添削)・『桃の会だより』掲載
302 ダニによる脱毛と聞く裏山の狸の母子は冬至を越せしや
読売歌壇 ,1/23,(栗木京子)
301 荒野ゆくバスより低き電柱を車窓に笑ふ旅もせしかな
雑誌[NHK短歌] 2月号,兼題 [電柱]佳作 (佐伯裕子)
300 裏よりのカーンにつづくカラカラは缶蹴り遊びぞ亡びざるらし
雑誌[NHK短歌] 2月号,兼題 [裏]佳作 (坂井修一)
299 大君の生まれたまひしこの日より伸ぶる日脚に映ゆる日の丸
桃の会1/8次点作(山川京子・添削)/→『桃の会だより』八号に掲載予定
298 ふるさとの秋の干潮(ひしお)に偲ぶなり暗礁(いくり)のごとき先師なりしと
桃の会10/2(山川京子・添削)・『桃の会だより』掲載
294 一跳ねにわが釣糸を断ちしとき鰡(ぼら)は見たるかスカイツリーを
NHK全国短歌大会(平成23年度)・秀作(栗木京子,島田修三)・佳作(小池光)
293 春立つとひさびさに吹く口笛はろくに鳴らずよ義歯を替えむ
NHK全国短歌大会(平成23年度)・兼題[立]入選
平成23(2011)年
297 インターネット古書流通に若描きのわが絵本見るきまりわるさよ
雑誌『短歌』24年1月号・題詠[本]入選?(中地俊夫)
296 幼な子に螺子(ねじ)巻かれつつ身をよぢり小刻みに鳴るオルゴールかな
読売歌壇 ,12/13,(俵 万智)
295 在りし日にひゆるりひゆるりと剥きくれし妻が位牌へ林檎まるごと
『定年歌壇』 朝日系タウン紙[定年時代]12月上旬号 ・第一席 (細野悦子)
294 一跳ねにわが釣糸を断ちしとき鰡(ぼら)は見たるかスカイツリーを
NHK全国短歌大会(平成22年度)・自由題・入選
293 春立つとひさびさに吹く口笛はろくに鳴らずよ義歯を替えむか
NHK全国短歌大会(平成22年度)・兼題[立]入選
292 妻の忌を重ねるほどにこの庭は虫の音乏し黄泉に拗(す)ねてや
雑誌『短歌現代』 12月号[読者歌壇]佳作(波田國芳・)
291B鴛鴦(おしどり)の二羽をつくづく見るにつけ睦みあふとも付きまとふとも
桃の会11/12・桃の会・(山川京子添削)
291 根つからの号令嫌ひも馴らされて転倒予防のストレッチ教室
『定年歌壇』 朝日系タウン紙[定年時代]11月上旬号 (細野悦子)
290 甘栗のなかにしばしばぬけぬけと渋きがまじり世は甘からじ
読売歌壇 11/7・(栗木京子)添削
289 自らの胸へと三たび突き入れし柳刃いづこ十年(ととせ)経しいま
雑誌『短歌現代』 11月号[読者歌壇]佳作(波田國芳)
288 頭にも蝉わめきしか在りし妻の脳に腫瘍のはびこりし日々
雑誌『短歌』11月号[公募短歌館]佳作?(沖ななも)
287 なほ咲ける百日紅(ひゃくにちこう)はなほも湧ける入道雲への呼応なるべし
読売歌壇 10/17・一席・(小池 光)
286 風立チヌイザ生キ「ザラ」メヤモとせる注釈にてはこころ立たなくに
第三回角川全国短歌大賞の・佳作(春日真木子)
285 耳よ待て夕刊配るエンジンとはやや異なれり郵便バイクぞ
雑誌『短歌現代』 10月号[読者歌壇]佳作(波田國芳・添削)
284 さくらんぼさへも禁止のまま逝きし妻よ今季も供物にて食め
『定年歌壇』 朝日系タウン紙[定年時代]9月上旬号・第二席(細野悦子)
283 巣に待てる子燕たちへ親が餌(え)の順たがへぬを見つつやすらぐ
読売歌壇 ,9/5,(岡野 弘彦・添削)
282 爺われは足もつらせて憤死せり長打なりしがセカンド手前に
現代歌人協会全国短歌大会・佳作(久我田鶴子)
281 打ち水に連れてせはしく立つ虹は宵間近なる庭に彩(いろ)へり
雑誌『短歌現代』 9月号[読者歌壇]佳作(武田弘之・添削)
280B 揚花火かへり見すれば遠花火晴れて明日は禍(まが)なかれかし
桃の会8/27(山川京子・添削)・『桃の会だより』掲載
280 萱(かや)茂る野辺に思ひぬ葉に擦れし傷に湯しみる童なりしと
『定年歌壇』 朝日系タウン紙[定年時代]8月上旬号・第三席(細野悦子)
279 人類に泳ぎは不向きならずやとプールサイドにしぶき浴びをり
NHKラジオ7/29[ひるのいこい]で放送/雑誌『NHK短歌』10月号(篠弘)
278 荒れ庭にまた咲きそめし薔薇を見よと妻の位牌を濡縁に置く
雑誌『短歌現代』 8月号[読者歌壇]佳作(武田弘之)
277 新調の簾をつけしわが庵(いお)はまるで老躯に絆創膏なる
雑誌『短歌』8月号[公募短歌館]佳作(伊藤一彦)
276 機窓なるわが列島はあらためて底(ソコ)ツ岩根(イハネ)もまだ若き国
雑誌『短歌』8月号[公募短歌館]佳作(山埜井喜美枝)
275 歓喜とも見えてうたてやリプレーの津波画像に乱舞せる鳥
雑誌『短歌現代』 7月号[読者歌壇]佳作(武田弘之)
274 首都に入るわが特急の沿線に暗礁(いくり)めくなり墓場いくつか
雑誌『短歌』7月号[公募短歌館]佳作(伊藤一彦)
273 仏壇の著莪をつぎつぎひらかせてあの世に妻は上機嫌らし
読売歌壇 ,6/20,(俵 万智)
272 宇宙遊泳せし人類も敵はずよ想定超ゆる大津波には
雑誌『短歌現代』 6月号[読者歌壇]佳作 (永井正子)
271 名にし負ふ田園調布ゆ望む富士かへり見すればスカイツリーぞ
雑誌『短歌』6月号・題詠[田園]入選 (安森敏隆)
270 小社(こやしろ)の鳥居へだてて噤(つぐ)む木と囀れる木と並び立つなり
雑誌[NHK短歌] 6月号,兼題 [立つ]佳作 (花山多佳子)
269 水遣りのしぶきに躍る小虹にもはしやぎたるかな在りし日の妻
雑誌[NHK短歌] 6月号,兼題 [日]佳作 (来嶋靖生)
268 不惑なるあたりに数を違(たが)へしか納得ゆかぬ七十三歳
雑誌『短歌現代』 5月号[読者歌壇]佳作 (永井正子)
267 土手桜かく一斉に散るごとく債務を尽くしきるよしもがな
雑誌[NHK短歌] 5月号,兼題 [桜]佳作 (米川千嘉子)
266 家々の犬らにはかに遠吠えを会得したるか寒の三更
雑誌『短歌現代』 4月号[読者歌壇]佳作 (永井正子)
265 西暦へのあの執着を棄てたるか彼の賀状に確(しか)と「平成」
雑誌『短歌』4月号[公募短歌館]佳作 (小高 賢)
264 ジェームズ・ディーンが野外映画を観るシーンに見入りたるかなわが反抗期
雑誌[NHK短歌] 4月号,兼題 [野]佳作 (今野寿美)
263 自転車の籠に風切る大根は一時間後の身を知らぬらし
雑誌『短歌現代』 3月号[読者歌壇]特選一席 (千々和久幸)
262 定家卿いまさばいかに電飾の大樹に懸かる冬の満月
雑誌『短歌』3月号[公募短歌館]佳作 (小高 賢)
261 再会の集ひに君は老漢らを鼓舞して今も生徒会長
雑誌『短歌』3月号・題詠[再会]入選 (大塚布見子)
260 靖国の宮の奥にて幽明のまじはりめけるときををののく
雑誌[NHK短歌] 3月号,兼題 [生・死]佳作 (米川千嘉子)
259 焼鳥屋に熾(おこ)る紀州の備長炭この火を知らずに紀を出でしかな
雑誌『短歌現代』 2月号[読者歌壇]佳作 (千々和久幸)
258 たとふれば短歌は障害物競走かたや俳句は三段跳びかと
雑誌『短歌』2月号[公募短歌館]佳作 (小高 賢)
257 オルゴールは沖縄歌の一節をくりかへしをり秋か嘉手納(かでな)も
雑誌『短歌』2月号・題詠[オルゴール]入選 (前川左重郎)
256 汝を名乗る車輛の往き来する橋をくぐりて如何にゆりかもめたち
読売歌壇 ,1/10, (俵 万智)
255 半世紀経し同期らと酔ふほどに己が話題はさらに持論へ
『定年歌壇』 朝日系タウン紙[定年時代]1月上旬号・(細野悦子)
平成22(2010)年
254 銀メダルの日本選手は主催国の銅の後ろに遠慮がちなり
読売歌壇 ,12/27, (岡野弘彦)
253 かほどまで鈍くなりしかこのごろの写真のわれに多き目つむり
雑誌『短歌現代』 1月号[読者歌壇]佳作 (千々和久幸)
252 大佛殿にて童いふココヲ塔ニ変ヘテアゲレバキット立ツヨと
NHK全国短歌大会(平成22年度)・入選
251 詐欺電話ありと告ぐるにせがれめは「ボケノ防止ニヨイ刺激ダ」と
NHK全国短歌大会(平成22年度)・入選
250 「靴音の引返しゆく夜長かな」とて枕辺の錠剤をまた
読売歌壇 ,12/6, (小池 光)
249 限りあるいのちゆゑにや雨音に蝉まじるなり夜明け前より
雑誌『短歌現代』 12月号[読者歌壇]佳作 (沢口芙美)
248 果皮荒き汝より得る句は「梨剥けりニュースに厚き面(つら)見つつ」など
雑誌[NHK短歌] 12月号,兼題 〈果物〉佳作 (今野寿美)
247 好む歌の結句の七の内訳はおよそ三音プラス四音
読売歌壇 ,11/8, (岡野弘彦)
246 寡夫(やもめお)の平均余命四年てふその八月の二十日をぞ酔ふ
雑誌『短歌現代』 11月号[読者歌壇]秀作 (沢口芙美)
245 水星は桁違ひぞとみづからを日々励まししかの猛暑はも
BS[ニッポン全国短歌日和]の放送中に注目作として紹介あり (穂村 弘)
244 ナガサキニモエゲツナイノガオチタデと噂走りぬ少国民らに
雑誌[NHK短歌] 11月号,兼題 [走]佳作 (東 直子)
243 深呼吸をつい重ねをり胸を病んで早死にされし父の忌なれば
『定年歌壇』 朝日系タウン紙[定年時代]10月上旬号・一席(細野悦子)
242 街灯の途切るるたびの梅雨闇のいよよ続きて家近きかな
雑誌『短歌』10月号[公募短歌館]佳作 (吉川宏志)
241 アスベルガーの症状なれや迷路図はいともたやすく孫抜け出づる
雑誌『短歌現代』 10月号[読者歌壇]佳作 (沢口芙美)
240 出迎への園児バスより七夕の笹あらはれて孫も下りくる
雑誌『短歌』10月号[公募短歌館]佳作 (秋葉四郎+今野寿美共選)
239 遠き日に天津甘栗ねだりたる倅(せがれ)もいまは紹興酒らし
雑誌『短歌』10月号・題詠[甘栗]入選 (島崎榮一)
238 右に海左に山のせまりくる紀勢線こそわが「帰省線」
雑誌[NHK短歌] 10月号,兼題 [海]佳作 (今野寿美)
237 現し世の蟻と覚えず靖國の宮の奥なる茣蓙に遇(あ)ひては
明治神宮鎮座90年記念大祭献詠短歌大会・佳作・10/24披講式に参列
236 妖術に縮められたる婿どのをあやす心地ぞ孫をい抱けば
NHK短歌,9/26放送・兼題 [抱く] (米川千嘉子)
235 右耳に寺僧の読経左にはハモりてやまぬ牛蛙たち
全日本短歌大会(第31回)・佳作賞(日本歌人クラブ)
234 柏餅ひとつ貰ふに葉脈のいちぢるしきをつい選りにけり
全日本短歌大会(第31回)・佳作賞(日本歌人クラブ)
233 馴染みきし理髪店にてさりげなく年金額もあたられてをり
『定年歌壇』 朝日系タウン紙[定年時代]8月上旬号・一席(細野悦子)
232 羽ばたきは雀と見しが電線にとまりて胸を反れば子燕
桃の会・8月例会 (山川京子・添削) ※原歌は「…雀めきしが…」
231 揚りたる花火は風にゆがみつつなほ仕組まれし順にきらめく
桃の会・8月例会・多点賞 (石田圭介ほか)
230 雨風を聞く朝床に離(さか)りゆく通勤の日々通学のころ
雑誌『短歌現代』 8月号[読者歌壇]佳作 (椎名恒治)
229 特急の窓を横へと這ひゐしが鈍行なれや雨筋は縦
雑誌『短歌』8月号[公募短歌館]佳作 (内藤 明)
228 をちこちに「われも桜」と名乗りゐしが並(な)べて緑に沈みたるかな
雑誌[NHK短歌] 8月号,兼題 [遠・近]佳作 (米川千嘉子)
227 教へ子の水禍を悔み火箸もて頬焼きませり郷の先師は
雑誌[NHK短歌] 8月号,兼題 [水]佳作 (東 直子)
226 自転車の南下なれども街路樹に萌ゆる緑の差をみとめゆく
雑誌[NHK短歌] 8月号,兼題 [南]佳作 (今野寿美)
225 書信減る郵便受を覆ふごとし妻が遺愛のあぢさゐの毬(まり)
読売歌壇 ,7/5, 一席 (岡野弘彦)
224 デイケアの送迎バスはこの路地へも入りきしかな妻在りし日々
雑誌[NHK短歌] 7月号,兼題 [おくる]佳作 (米川千嘉子)
223 かはせみの嘴(はし)もて運ぶ小魚を雛ら待つらし順を守りて
靖国神社みたま祭献詠・次点歌。6/29拝殿での披講式に参列。 (三枝昂之・他)
222 テニス肘との診断に覚えなしパソコン過度のマウス肘にや
雑誌『短歌現代』 6月号[読者歌壇]佳作 (椎名恒治)
221 裏にきてけふは早口言葉めくホーホケキョ後のケキョの連発
雑誌『短歌』6月号[公募短歌館]佳作 (田宮 朋子)
220 仲春の下山路にまた会ふつばめ村の過疎化に惑ひゐるのか
雑誌『短歌』6月号[公募短歌館]佳作 (松坂 弘)
219 劇場を出づるやいなや煙草吸ふ友よ柳の風はうまいぞ
雑誌[NHK短歌] 6月号,兼題 [草]佳作 (今野寿美)
218 寡夫(やもめお)のわが税申告は日本一簡素のはずが「手引き」難解
読売歌壇 ,4/26, (岡野弘彦)
217 受話器より「虹だ爺ちゃん」てふ声の息の具合は歩行中らし
BS[ニッポン全国短歌日和]の実況で注目作として紹介あり (小島ゆかり)
216 建国の記念のけふを梅佳節とも知りたれば香れこの国
雑誌『短歌』5月号[公募短歌館]佳作 (松坂 弘)
215 少年はひたに目指しきそこここに公衆電話の待つ大都市を
雑誌『短歌』5月号・題詠[公衆電話]入選 (山埜井喜美枝)
214B川の面(も)を筏なしゆく花屑はビルをつぎつぎ突きて乱れず
市川市短歌大会(予選?)入選
214 放射線は星雲めける脳腫瘍を妻より消しき一時なりしが
雑誌[NHK短歌] 5月号,兼題 [消す]佳作 (今野寿美)
213「春ごたつ祝辞原稿ちぢまらず」などと捻(ひね)りてなほ縮まらず
読売歌壇 ,4/19, 一席 (俵 万智)
212 忘れゐし雨戸あわてて閉ざす手をしばし留めぬ寒の星座に
雑誌『短歌現代』 4月号[読者歌壇]佳作 (椎名恒治)
211 背伸びして幼なごころに覗きたる郵便ポストの闇を忘れず
雑誌『短歌』4月号・題詠[郵便ポスト]入選 (中地俊夫)
210 法事への道をたどれば卯の花やかつて煙を噴きし鼻にも
第二回角川全国短歌大賞・秀逸 (小島ゆかり)/『短歌』6月号
209 川風を得て凧糸は遠き日の童のわれを吊りにかかりき
雑誌[NHK短歌] 4月号,兼題 [糸]佳作 (今野寿美)
208 遠き日のおみくじ好きの乙女子は吾を選びしがはや位牌なる
読売歌壇 ,3/1 , 二席 (栗木 京子)
207 水道の凍結破裂噴く水に虹は立ちつつ修理師を待つ
NHK短歌2/28放送 ・兼題[浮く] (米川千嘉子・添削)
206 「沖縄の海はプールっぽくきれい」「からいけどね」と後期子供ら
雑誌『短歌現代』 3月号[読者歌壇]佳作 (御供平佶)
205 忘れたや進駐軍のMP(エムピー)の交通整理の笛も身振りも
雑誌[NHK短歌] 3月号,兼題 [笛]佳作 (今野寿美)
204 読み明かす幕臣伝に清廉の川路聖謨(としあきら)つひに自決ぞ
雑誌[NHK短歌] 3月号,兼題 [名前]佳作 (米川千嘉子)
203 房総の最南端の荒磯の岩攀(よ)ぢるなり孫と競ひて
雑誌『短歌現代』 2月号[読者歌壇]佳作 (御供平佶)
202 神無月に思へば在りし日の妻と互ひの神を諍(いさか)ひしかな
『定年歌壇』 朝日系タウン紙[定年時代]1月上旬号・二席(細野悦子)
平成21(2009)年
201 ポケットに着信の気(け)をややもせば妻と紛(まが)ひぬ忌を重ねても
雑誌『短歌現代』 1月号[読者歌壇]特選 (御供平佶)
200 朝床にテレビの短歌俳句見て又寝の白き闇に入りゆく
雑誌[NHK短歌] 1月号,兼題 [白]佳作 (東 直美)
199 垂直の灰をしづかに落としては若返りをり線香の火は
雑誌[NHK短歌] 1月号,兼題 [線]佳作 (今野寿美)
198 坂道の塀に障子を立てかけて洗ふ老女のなほ斜めなる
読売歌壇 ,12/7 (栗木 京子)
197 慣らひにて墓に納めしあの壷に妻よ籠もるな望の今宵は
NHK・平成21年度・全国短歌大会・入選
196 いま燃ゆる芋柄(おがら)は義母の魂(ソウル)とのバイバイファイヤーなるぞ帰化嫁
NHK・平成21年度・全国短歌大会・入選
195 人麻呂の見ざりし宇宙画像なる清き地球よ大和島根よ
NHK・平成21年度・全国短歌大会・題『人』・入選
194 古障子をしとどに濡らし得意気に剥がしたるかな在りし日の妻
雑誌『短歌現代』 12月号[読者歌壇]佳作 (松坂 弘)
193 性(さが)なれや万年筆の先をまた瓶のインクにくどく浸して
雑誌『短歌』12月号・題詠[万年筆]入選 (松坂 弘)
192 十七歳同士交はしし約束のままひたすらの妻なりしかな
雑誌[NHK短歌] 12月号,兼題 [約束]佳作 (今野寿美)
191 ふるさとに月は昇りぬ老友よ遥けき恋を明かしあふべし
『定年歌壇』 朝日の折込タウン紙[定年時代] 11月上旬号・二席(細野悦子)
190 大瀧の裏は斯くやと大声にて見知らぬ人と雨宿りせる
雑誌『短歌現代』 11月号[読者歌壇]特選 (松坂 弘)
189 酸素吸ふ妻に添ひゐて救急車の窓に世間の戸惑ひを見き
雑誌『短歌』11月号[公募短歌館]佳作 (栗木京子)
188 「花びらを飲む鯉の口さくら色」なりしが浮かぶ紅葉には来ず
BS「ニッポン全国短歌日和」10/24,放送で紹介(栗木京子)/番組100選に入選
187 パソコンの怒りに触れて失ひしデータを偲ぶ星月夜かな
雑誌[NHK短歌] 11月号,兼題 [失う]佳作 (米川千嘉子)
186 電動の鉛筆削り器誇らかに授受されしかなかつて賄賂に
雑誌[NHK短歌] 11月号,兼題 [文具]佳作 (今野寿美)
185 紫陽花の幼き毬(まり)に色差して地球はやはり潤ひの星
国民文化祭(24)静岡・特選 (三枝昂之)/入選 (谷岡亜紀)
184 また別の投票依頼に愛想よく受話器を置きて都合三票
雑誌『短歌現代』 10月号[読者歌壇]特選 (高久 茂)
183 怒りつつ戻れば鉢のサボテンに花ひらきをり煽るごとくに
雑誌『短歌現代』 9月号[読者歌壇]佳作 (高久 茂)
182 「ほがらかな道子さあん」と呼びくるる友にも黙(もだ)す妻の仏壇
雑誌『短歌』9月号[公募短歌館]佳作 (沢口芙美+松平盟子,共選)
181 一太てふ孫の名なにか物足りぬまま「一太丸」などと呼びなす
雑誌[NHK短歌] 9月号,兼題 [丸]佳作 (今野寿美)
180 放送にもまた聞く「すごく」の大半は蓋(けだ)し「とても」の代はりなるべし
読売歌壇 ,8/3 (小池 光)
179 郷の師の遺詠を肝に励まなむ「生き清むべし生くるかぎりは」
雑誌『短歌現代』 8月号[読者歌壇]秀作 (高久 茂)
178 倒影の富士に残れる白雪を吹雪となしてボート爆走
雑誌『短歌』8月号[公募短歌館]佳作 (沢口芙美)
177 カーブごとに右に左に迫りくる富士へ富士へとさかのぼる春
雑誌『短歌』8月号[公募短歌館]佳作 (松平盟子)
176 目つむるなカメラを見よと指図せし家族写真のころは離(さか)りぬ
雑誌[NHK短歌] 8月号,兼題 〈家族〉佳作 (加藤治郎)
175 飼亀を池に戻して幾月ぞ飢ゑてをらずや恋を得たるや
朝日歌壇 ,7/13 (馬場あき子)
174 聴き倣(な)すに特許許可局とは鳴かでドッキョコリタカ独居懲リタカ
読売歌壇 ,7/13 (小池 光)二席
173 初めてのカップ容器のラーメンに「たべてもふえる」と怯む四歳
雑誌[NHK短歌] 7月号,兼題 〈食べ物〉佳作 (加藤治郎)
172 初燕汝は南洋に見てきしか海上給油の奮励努力を
雑誌[NHK短歌] 7月号,兼題 [燕]佳作 (今野寿美)
171 てぐすごと若葉楓に絡みたる一点の朱の浮子(うき)と引きあふ
朝日歌壇 ,6/8 (永田和宏)
170 蕾まだ硬き小枝も控へけり咲きつくすかと寄りたる梅に
雑誌『短歌現代』 6月号[読者歌壇]佳作 (田野 陽)
169 「川柳が今朝載つてなあ」「そんなこと会社へ掛けてくるな父さん」
雑誌『短歌』6月号[公募短歌館]佳作 (三枝・花山・大下、共選)
168 お下げにて笑みも唱歌も跳び箱も派手なりしかな遠きマドンナ
雑誌[NHK短歌] 6月号,兼題 [恋]佳作 (加藤治郎)
167 国稚(ワカ)ク浮キシ脂(アブラ)ノゴトクシテと伝承の国なほ漂へる
NHK短歌6/7放送, 兼題[浮く] (今野寿美)
166 猫の子を獲ると噂の大鴉来て幼女らの隠れん坊見る
読売歌壇 ,4/20, 二席 (栗木京子)
165 砥石への角度保ちて包丁を研ぐこのわざを会得あれ婿
『定年歌壇』 朝日の折込タウン紙[定年時代] 4月上旬号・一席(細野悦子)
164 春雨の夜半にしのべり凍て土に沁みるがごとき師恩なりけり
読売歌壇 ,4/6 (岡野弘彦)
163 在りし日の闘病の妻すがりたるこの石塀や寒の手触り
雑誌『短歌』4月号[公募短歌館]佳作 (香川ヒサ・花山多佳子、共選)
162 某社史は友を巧みに省きたり雇はれなれど初代社長を
雑誌『短歌現代』 3月号[読者歌壇]秀作 (大下一真)
161 乗継ぐにつれ糠(ぬか)雨はみぞれきていまや吹雪のきざす帰路かな
雑誌[NHK短歌] 3月号,兼題 [雪]佳作 (川野里子)
160 潜る鳥と浮寝の鳥と佇める古稀にそれぞれ過ぐる光陰
『定年歌壇』 朝日の折込タウン紙[定年時代] 2月上旬号(山下和夫)
159 ですをデサッますをマサッと吐くやうな気象放送さむざむと聴く
読売歌壇 ,1/26, (俵 万智)
158 アルバムに遺れる犬は「ココ掘レ」と吠えず果てしよ十四年ゐて
雑誌『短歌現代』 2月号[読者歌壇]佳作 (大下一真)
157 「これなあに」繰返す児を預かれば実(げ)に物の名は不思議なるかな
雑誌『短歌』2月号[公募短歌館]佳作 (玉井清弘)
平成20(2008)年
156 痛風のこたびは右手(めて)の指に出てペン持つなとやキー打つなとや
雑誌『短歌現代』 1月号[読者歌壇]佳作 (逸見喜久雄)
155 霧雨に騎馬戦を経てリレーへと律儀なるかな運動会は
雑誌『短歌』1月号[公募短歌館]佳作 (池田はるみ)
154 臥す妻に流動食を掬ひつつ素早くビールを呑みもせしかな
雑誌『短歌』1月号[公募短歌館]佳作 (成瀬有選)
153 ケータイを敢へて持たぬか駅前の公衆電話に笑まふ愛乙女(えをとめ)
読売歌壇 ,12/22, (俵 万智)
152 黄落の多摩の林を抜けくれば貯水湖越しに澄ます遠富士
雑誌[NHK短歌] 1月号,兼題 [林]佳作 (高野公彦)
151 妻の脳に憑(つ)きくる腫瘍とのいくさ三たび重ねて敢(あ)へなかりけり
雑誌[NHK短歌] 1月号,兼題 [重ねる]佳作 (栗木京子)
150 まだ慣れぬ寡夫(やもを)暮らしをからかふか鴉に今日は百舌も加はり
『定年歌壇』 朝日の折込タウン紙[定年時代] 12月上旬号(山下和夫)
149 地下を来て架空めきたる湾岸の街に見つけし穂草数本
NHK全国短歌大会(平成20年度)兼題[空] 入選
148 王女をり宇宙人をり武者もをり劇を終へたる子らの校庭
NHK・平成20年度・全国短歌大会 (佐伯裕子・特選)
147 飛立ちし混血の子は受話器より「マニラ暑いよ冬休みでも」
NHK全国短歌大会(平成20年度)入選
146 大振りにてまだ艶残る木の実から拾ひゆくなり三歳の手も
NHK短歌12/28放送, 兼題[艶] (川野里子)
145 のぼりゆく地下階段の出口なる矩形の空はみな鰯雲
雑誌『短歌現代』 12月号[読者歌壇]佳作 (逸見喜久雄)
144 あなどりしこの霧雨に自転車をまたもや停めて眼鏡拭くとは
雑誌『短歌』12月号[公募短歌館]佳作 (今野寿美)
143 企業にて鬼の立場にありし甥(おい)あれよにこにこ釣具店主に
読売歌壇 ,11/24, (栗木京子)
142 残りゐし海の色失せ総身に火傷(やけど)はげしや目刺一連
雑誌[NHK短歌] 11月号,兼題 [傷]佳作 (川野里子)
141 淵に釣る竿をからかひ太糸を断つて失せしは河童なるべし
雑誌[NHK短歌] 11月号,兼題 [断つ]佳作 (栗木京子)
140 風評の芳(かんば)しからぬあの爺さん朝霧を来て拾ふ銀杏
読売歌壇 ,10/20, (小池 光)
139 いまひたる一番風呂は仕舞ひ湯も兼ねてゐるなり寡夫(やもを)にあれば
NHK短歌10/26放送, 兼題[舞] (川野里子)
138 著莪(しゃが)の花雨滴とともに届きたり在りにし妻が根分けせしとて
雑誌『短歌』10月号[公募短歌館]特選 (吉川宏志)
137 教卓にそつと草花あしらへる同窓女子ゐき不出来なれども
雑誌[NHK短歌] 10月号,兼題 [草]佳作 (川野里子)
136 当地にも特許許可局(トッキョキョカキョク)出向と鳴いてをりしが雨天早退
雑誌『短歌現代』 9月号[読者歌壇]佳作 (中野照子)
135 よく閉ぢるこの踏切や列車好きの孫の歓喜の途切れざる場所
読売歌壇 ,8/25, 三席 (俵 万智)
134 窓に射す朝焼けに目を覚ましては慌てて雨戸引く寡夫(やもを)なる
雑誌[NHK短歌] 9月号,兼題 [引く]佳作 (川野里子)
133 アルバムに色褪(あ)せしかな妻と吾(あ)のブルージーンズも藍の作務衣も
雑誌[NHK短歌] 9月号,兼題 [藍]佳作 (辺見じゅん)
132 夕焼けに影絵の火の見まだ立つか在りにし妻と迷ひたる道
アサヒタウンズ 8/7号,特選/同・ 08年度最優秀作 (米川千嘉子)
131 本来はいま五月闇なるはずの辻かがやけり飲料自販機
雑誌『短歌現代』 8月号[読者歌壇]佳作 (中野照子)
130 たそがれの空地の隅に眼(まなこ)四つ光りてあれに猫番(つが)ふらし
雑誌『短歌』8月号[公募短歌館]佳作 (内藤 明)
129 有料の六十分は弁護士のこの高笑に終始するのか
雑誌『短歌現代』7月号[読者歌壇]佳作 (中野照子)
128 新緑や在りにし妻に脳腫瘍の再々発のころも新緑
雑誌[NHK短歌] 7月号,兼題 [緑]佳作 (栗木京子)
127 満七十の今朝の目覚めの戸惑ひはなぜか二十歳のをりに重なる
雑誌『短歌現代』6月号[読者歌壇]佳作 (大島史洋)
126 あんたのは捻(ひね)るんぢやなく抉(えぐ)るんだといふ句評をたぢたぢと聞く
雑誌『短歌』6月号[公募短歌館]佳作 (米川千嘉子)
125 孫ながら乙女さびたり大路(おほぢ)くる自転車からの遠会釈さへ
読売歌壇 ,5/12, 一席 →のちに年間賞 (栗木京子)
124 散髪の身じろぎならぬひとときを店のラジオに喋り抜かるる
NHK短歌6/1放送, 兼題[惜しむ] (栗木京子)
123 引力に遊ぶごとしよ泉より湧き出(づ)る水に躍る砂たち
BSスペシャル列島縦断全国大会 ・特選 (尾崎左永子)
122 朝ごとに東京タワーの伸びゆくをアパートに見き半世紀前
雑誌[短歌現代] 5月号 [読者歌壇]佳作 (大島史洋)
121 東へと木々なびけども千切れ雲は西へ走りぬ浅春の磯
雑誌[NHK短歌] 5月号,兼題 [千切る]佳作 (川野里子)
120 がらすきののぞみ号より大富士を十人分ほど仰ぎつくしぬ
読売歌壇 ,3/31, (小池 光)
119 亡き妻は脳手術後に言ひしかな「さうねたしかに日脚伸びたわ」
アサヒタウンズ 2/21号,入選 (米川千嘉子)
118 バルカンを離陸後白きアルプスを遠望せしがやがて惜別
雑誌[NHK短歌] 3月号,兼題 [白]佳作 (川野里子)
117 服喪とて賀状遠慮の葉書また白き落葉のごとく舞ひこむ
雑誌[NHK短歌] 3月号,兼題 [白]佳作 (辺見じゅん)
116 門(かど)先の立ち話また見るにつけ偲ばるるなり在りし日の妻
雑誌[NHK短歌] 3月号,兼題 [門]佳作 (栗木京子)
115 待ちぼうけといふ風情をひさびさに味はひをりぬ携帯電話(ケータイ)忘れて
読売歌壇 ,1/21, (俵 万智)
114 初空を経てポケットにとどきたる初電話よりぼやく渋滞
NHKラジオ[新春おめでた文芸]1/3放送
平成19(2007)年
113 顔ぢゆうにざらつくものを逆撫でて夜長なりしと肯(うけが)ひにけり
読売歌壇 ,12/24, (小池 光・三席)
112 沖つ辺を神武船団征(ゆ)かせしか熊野の灘を望む岩風呂
雑誌[NHK短歌] 1月号,兼題 [風呂]佳作 (川野里子)
111 天安門事件直前かの地にて買ひし朱肉ぞこの深き朱は
雑誌[NHK短歌] 1月号,兼題 [肉]佳作 (高野公彦)
110 東欧の鄙(ひな)の旅亭に散弾をまた除きては鴨肉を食(は)む
雑誌[NHK短歌] 1月号,兼題 [肉]佳作 (栗木京子)
109 祖父われの上擦(うはず)る声を如何にせん国歌くぐもる卒業式場
NHK(平成19年度)全国短歌大会・兼題「声」・入選
108 六枚の畳すべてを使ひきる孫の昼寝に二日見飽きず
NHK(平成19年度)全国短歌大会・秀作・ (沖ななも)
107 飛ぶために鳥らの骨は空洞と知つて鴉をけさ仰ぎ見る
NHK(平成19年度)全国短歌大会・秀作 (稲葉峯子)
106 迷ひしが携帯電話に亡妻の短縮番号なほ残すなり
NHK(平成19年度)全国短歌大会・入選
105 われながら負け惜しみめく冗句(ジョーク)にて忘年会の話題変へたり
NHK短歌12/23放送, 兼題[惜しむ] (川野里子)
104 西安の自由市場の唐辛子の山それぞれに朱を競ひけり
雑誌[NHK短歌] 12月号,兼題 [唐辛子]佳作 (川野里子)
103 バルカンの青空市の唐辛子もかの戦乱に飛散したるか
雑誌[NHK短歌] 12月号,兼題 [唐辛子]佳作 (辺見じゅん)
102 固太りてふ評判もいつか消えてかの肥満児はゲームオタクとか
雑誌[NHK短歌] 12月号,兼題 [太る]佳作 (栗木京子)
100 朝十時もう売店は閉められて単線ホームは猫の日溜まり
朝日歌壇 11/19, (馬場あき子)
99 迅雷の車窓やうやく逃げ込みしトンネルのこの奇なる静寂
アサヒタウンズ 11/15号,入選 (米川千嘉子)
98 秋闌(た)くる小公園のぶらんこに古稀の寡男(やもを)の「ゆあーん・ゆよーん」
アサヒタウンズ 10/18号,入選 (米川千嘉子)
97 教室の机離れてふざけゐし次男よいまはあんな課長か
読売歌壇 ,10/16, (俵 万智・一席)
96 秋なれば一人欠くるもグル-プ展遺作の『橋』に佇みてをり
読売歌壇 に初掲載,10/8, (俵 万智・二席)
95 全山の蝉のわめきに急かされて木の実そろそろ黄ばむつもりか
朝日歌壇 9/9, (馬場あき子)
94 納骨の箱書きの筆ためらひにためなひながらしるす妻の名
NHK短歌9/23放送, 兼題[書く] (川野里子)
93 波しぶき浴びて露天の岩風呂にはしやぎたるかな在りし日の妻
雑誌[NHK短歌] 9月号,兼題 [浴びる]佳作 (川野里子)
92 さみだれや去年(こぞ)昏睡のわが妻をホスピス棟へ移したるころ
朝日歌壇 8/12 (永田和宏)
91 助数詞は「個」に集約の流れにて「爺が一個」と孫も言ひたげ
『定年歌壇』 (朝日新聞挿入紙・定年時代)8月上旬号・(山下和夫)
90 醜草(しこくさ)の茂るがままの小庭にも妻が遺せしポピーの暖色
雑誌[NHK短歌] 8月号,兼題 [色]佳作 (川野里子)
89 沼底をじわじわ移り行く色は蝲蛄(ざりがに)のさぞ古豪なるべし
雑誌[NHK短歌] 8月号,兼題 [色]佳作 (辺見じゅん)
88 タクシーの窓濡らしゆく夕立に水族館めく盛り場に入る
雑誌[NHK短歌] 8月号,兼題 [濡らす]佳作 (栗木京子)
87 受話器より孫の口調に異常なく「ママはパートで姉ちんは留守」
アサヒタウンズ 7/19号,入選 (米川千嘉子)
86 帰国機の眼下に凍つるシベリアに光る蛇行はアムールなるべし
雑誌[NHK短歌] 7月号,兼題 [光る]佳作 (辺見じゅん)
85 地下駅の上り階段途中よりやはり兆しぬ花粉症状
雑誌[NHK短歌] 6月号,ラジオ佳作 (篠弘)
84 半年を経て見つけたり亡妻の帽子の底に光る白髪(しらが)を
NHK短歌5/27放送, 兼題[光る] (川野里子)
83 亡妻の荒き心音(しんおん)想ふかな夜半の雨垂れ聞くにつけても
雑誌[NHK短歌] 5月号,兼題 [雨]佳作 (河野裕子)
82 灯明を抜かりにつつも馴染みきぬ「妙心道華(めうしんだうくわ)信女」てふ妻
NHK短歌3/24放送,特選一席(山埜井喜美枝)/及びゲストの一首選にも。
81 封印切りめく思ひにて箪笥より遂に札(さつ)出す年金日前
雑誌[NHK短歌] 3月号,自由題,佳作 (山埜井喜美枝)
80 窃(ぬす)み酒には趣(おもむき)もありにしを妻に逝かれて独り酌むとは
アサヒタウンズ 2/15号,佳作 (米川千嘉子)
79 目にせしは発掘といふ墓あばき明(みん)の遺跡も兵馬俑坑も
雑誌[NHK短歌] 2月号,兼題 [掘る],佳作 (山埜井喜美枝)
78 ご神体は八咫(やた)ノ鏡と同型にて試作品とも鋳(い)損なひとも
雑誌[NHK短歌] 2月号,兼題 [鏡]佳作 (河野裕子)※和歌山日前神宮
77 生前はさぞ貪りをを尽したらん大鋏いま蟹鍋に煮ゆ
朝日歌壇 1/15, (馬場あき子)第一席
平成18(2006)年
76 風走る青田の波に負けまじと畦駆けてより半世紀余ぞ
NHK全国短歌大会(平成18年度) 兼題「波」入選
75 華やげる翁(おきな)媼(おうな)の同窓会むかし夜学の灯は暗かりき
NHK全国短歌大会(平成18年度) 自由題,入選 ※青陵高校(定時制)
74 脳萎えて失禁の妻拭ひつつ己が嘆きもひた拭ふなり
NHK全国短歌大会(平成18年度) 自由題,入選
73 待つといふよりも待たねばならざりし火葬の妻のまだ温き骨
雑誌[NHK短歌] 1月号兼題 [待つ],佳作 (山埜井喜美枝)
72 息尽きし妻の顔より無造作に剥ぎ取らるるよ酸素マスクは
雑誌[NHK短歌] 1月号,佳作 (河野裕子)
71 息尽きて酸素マスクのもう鳴らぬ妻より生(あ)るるこの静寂(しじま)はも
雑誌[NHK短歌] 12月号,佳作 (三枝昂之)
70 脳腫瘍も眼の患難も荼毘を経て晴れわたるべし妻の黄泉路は
アサヒタウンズ 11/16号,佳作 (米川千嘉子)
69 枝にゐし日はことごとく忘れしか地に転がりて遊ぶ落葉ら
雑誌[NHK短歌] 11月号,兼題 [忘れる]佳作 (三枝昂之)
68 閉ざされし荼毘の扉に背向(そむ)きつつ写真の妻とともによろめく
アサヒタウンズ 10/21号,特選 (米川千嘉子)
67 童らの日焼け褪(あ)せゆく中秋にも肌濃き汝(なれ)や混血の孫
朝日歌壇 10/9, (馬場あき子)第一席
66 糖分とて桜桃のこの一粒も止(と)められたるよ昏睡の妻
アサヒタウンズ 9/21号,佳作 (米川千嘉子)
65 看取りたる帰路を夕日へ歩むいま妻の腫瘍に放射線とぞ
アサヒタウンズ 8/31号,佳作 (米川千嘉子)
64 認知症の妻の粗相を干しにつつ梅雨晴間なる鶯を聴く
雑誌[NHK短歌] 9月号,兼題 [干す]佳作 (山埜井喜美枝)
63 嘗て率ゐ今も関はるオフィスも早これまでぞ実印の赤
アサヒタウンズ 7/20号,佳作 (米川千嘉子)
62 乗換への電車遅しと待つ列に割込みきしよ初夏の風
雑誌[NHK短歌] 8月号,兼題 [乗る]佳作 (山埜井喜美枝)
61 遠き日の風邪薬なる絵の鬼神いまもときをり夢に駆けくる
雑誌[NHK短歌] 7月号,兼題 [薬]佳作 (山埜井喜美枝)
60 天守閣なれば掃出し窓に似て非なる装置は石落としとか
雑誌[NHK短歌] 7月号,兼題 [掃く]佳作 (佐々木幸綱)
59 豆腐屋の赤き腕(かひな)に掬はれし豆腐は豆腐に別れきたれり
アサヒタウンズ 6/15号,佳作 (米川千嘉子)
58 店頭に四月開始の手帳積まれサウスポー用具のごとき違和感
雑誌[NHK短歌] 6月号,兼題 [手帳]佳作 (山埜井喜美枝)
57 吉報を書きつけざまの手帳にてつくる小風の心地よきこと
雑誌[NHK短歌] 6月号,兼題 [手帳]佳作 (三枝昂之)
56 三種混合接種に泣きし孫と見るソメイヨシノは交配種とか
アサヒタウンズ 5/18号,佳作 (米川千嘉子)
55 隣家よりお褒めいただく庭薔薇はあちら順光こちら逆光
BSスペシャル,4/22実況,兼題 [庭]の注目作 として(尾崎左永子)
53 よく曲がるモノレールかな地図よりも余分にカーブあるがごとくに
朝日歌壇 3/6, (永田和宏)
52 来場の兜太宗匠八十句を掴みては投げ千切りては投げ
朝日歌壇 2/12, (永田和宏)
51 髪型に髭に流行りを競ひたる友のなかばは逝きにけるかな
雑誌[NHK短歌] 2月号,兼題 [ひげ]佳作 (山埜井喜美枝)
50 指させば律儀に縮む亀の首まだ冬眠の気(け)はみえずして
雑誌[NHK短歌] 2月号,兼題 [指]佳作 (佐々木幸綱)
49 老妻の退院祝ふ乾杯に最年少は母乳欲(ほ)るなり
アサヒタウンズ 1/17号,佳作 (米川千嘉子)
48 「拝啓」以後しだいに細めゆく葉書つひに表の隅に「敬具」と
NHK短歌1/14放送,兼題 [はがき] (河野裕子)
平成17(2005)年
47 還るべき北の島根の映像に雪解くるなり水光るなり
NHK全国短歌大会(平成17年度) 兼題「光」入選/北方四島
46 かあかあかあ花も宴(うたげ)も見放題さらに喧嘩も恋のはじめも
NHK全国短歌大会(平成17年度) 自由題,入選
45 ふるさとを掠め来たりし台風ぞ豪雨は窓にも手にも親しく
NHK全国短歌大会(平成17年度) 自由題,入選
44 ぐづる児の毛を吹分けて見つけたり秋の汗疹(あせも)のしたたかなやつ
雑誌[NHK短歌] 12月号,佳作 (山埜井喜美枝)
43 マンホールの蓋にて滑る自転車を立て直しつつ夕立を漕ぐ
雑誌[NHK短歌] 12月号,ラジオ佳作・添削あり (篠弘)
42 マッカーサーへ給食感謝の作文を書かされしかな鉛筆なめなめ
雑誌[NHK短歌] 12月号,兼題 「えんぴつ」佳作 (佐々木幸綱)
41 眼疾の妻な嘆きそ濃霧にて滝はわれにも響(どよ)むばかりぞ
アサヒタウンズ 11/17号,佳作 (米川千嘉子)
40 治療とて今日も頭脳に放射線を浴びたる妻と月へ佇む
朝日歌壇 11/7, 二席 (永田和宏)
39 孕(はら)みても流れがちぞと診られしが生(あ)れて外孫泣きわめくなり
BS短歌スペシャル,10/22実況,兼題[流れる]の注目作として(稲村弘)
38 黄斑膜変性といふ眼病の妻の凝視に映えよ朝顔
雑誌[NHK短歌] 11月号,佳作 (山埜井喜美枝)
37 乗り換への列にて待てば背をくだる各停・急行・特急の汗
アサヒタウンズ 9/15号,特選三席 (米川千嘉子)
36 ふつこ跳ねて魚眼にせしか東京の湾岸の灯も波止(はと)に釣る吾(あ)も
雑誌[NHK短歌] 9月号,兼題 [東京]佳作 (山埜井喜美枝)
34 切開の血潮くぐりて何事もなかりしごとく眠る嬰(やや)はも
アサヒタウンズ 7/21号,佳作 (米川千嘉子)
33 難産を越えし娘も生(あ)れし子もやっと眠りて梅雨の月透く
朝日歌壇 7/10 (馬塲あき子・初入選)
32 南風(まぜ)の雲ひくくうねりて紀ノ国の叔母の卒寿の魂(たま)をさらひぬ
雑誌[NHK短歌] 7月号,兼題 [風]佳作 (山埜井喜美枝)
31 日南の空港すくむ春疾風(はやて)あの椰子の木のしなふことしなふこと
雑誌[NHK短歌] 7月号,兼題 [風]佳作 (三枝昂之)
30 忸怩(ぢくぢ)たり早い話がアメリカに付合はざるを得ぬ立場にて
雑誌[NHK短歌] 7月号,兼題 [早い]佳作 (佐々木幸綱)
29 転生なら縄文晩期よ弥生人がこの多摩川をのぼりくる頃
アサヒタウンズ 6/16号,佳作 (米川千嘉子)
28 脳腫瘍の手術よりまだ覚めぬ妻家々の窓灯りゆけども
NHK短歌←改称 6/25放送<添削コーナーにて>兼題 [窓] (河野裕子)
27 泳ぐ音符すなはちおたまじゃくしらを貪(むさぼ)る亀よ汝はきつと鳴け
アサヒタウンズ 5/18号,佳作 (米川千嘉子)
26 新設の光通信ケーブルにも雀並びて春立ちにけり
雑誌[NHK短歌] 6月号,兼題 [立つ]佳作 (三枝昂之)
25 妻の脳の断層写真整然と曼荼羅めくを女医に説かるる
アサヒタウンズ 4/21号,佳作 (米川千嘉子)
24 駅前に出身力士の大幟三連敗にもはためきにけり
雑誌[NHK短歌] 6月号,兼題 [駅]佳作 (河野裕子)
23 枝の蝉を狙ふ猫めへ「こらこら」と放つ礫(つぶて)よまさか当たるな
雑誌[NHK短歌] 5月号,兼題 [猫]佳作 (永田和宏)
22 日溜りに戯れる子らその母を野良猫の身と知るはいつごろ
NHK歌壇 3/5放送,兼題 [猫]特選 (松平盟子)
21 遠富士は寒夕焼に影絵成しひろがる多摩の灯は架空めく
アサヒタウンズ 3/17号,佳作 (米川千嘉子)
20 ハガチー事件アイクの訪日断念に命つなぎき日章旗派も
雑誌[NHK短歌]←改称 4月号,兼題 [断念]佳作 (福島泰樹)
19 年の瀬の坂にかかればまた一台かすめ去りたり無灯自転車
雑誌[NHK短歌]←改称 4月号,佳作 (永田和宏)
18 雪掻きの賀詞交換となりにけり日頃無縁の亭主われらの
朝日歌壇 1/24 (高野公彦・初入選)
平成16(2004)年
17 四肢のうちの二脚で立ちし人類は余る二本で殴り殴らる
雑誌[NHK歌壇] 17年3月号,兼題 [殴る]佳作 (小島ゆかり)
16 花びらのひらくかたちに蜜柑剥き汝は指より乙女さびゆく
雑誌[NHK歌壇] 17年3月号,佳作 (松平盟子) -15
15 なにゆゑに外国人に声似せて日本語歌ふぞ歌手の多くは
雑誌[NHK歌壇] 17年3月号,佳作 (小島ゆかり)
14 流星やここは奇しくも畏くも生き継ぐものを許されし星
雑誌[NHK歌壇] 17年1月号,兼題 [許す]佳作 (福島泰樹)
13 出張は不首尾なれども特急にいつもの柿の葉鮨ほどきゆく
NHK歌壇 17年11/16放送,兼題 [葉] (松平盟子)
12 兄を責め「掴ミヒシギテソノ四肢(エダ)ヲ引キモギ」しとぞ倭建(やまとたける)は
雑誌[NHK歌壇] 12月号,兼題 [掴む]佳作 (福島泰樹)
11 次男からのポケット電話は縁談ぞ虫らもしばし鳴きやみて聞け
NHK全国短歌大会(平成16年度)自由題,入選/[作品集]に収録
10 春秋の雲無秩序に出没し世を映せるか荒(あら)梅雨の天
NHK全国短歌大会(平成16年度)自由題,入選/[作品集]に収録
9 同窓会名簿にはまだ我が名見ゆ常盤(ときは)青木のわくら葉のごと
アサヒタウンズ 10/21号,佳作 (米川千嘉子)
8 育ちたる家に椅子なく隣りにも友が部屋にもやはりなかりし
NHK歌壇 9/25放送,兼題 [椅子] (福島泰樹)
7 あれを見よ豊旗雲にさす入日あの方向へまはせハンドル
朝日歌壇 8/23 (島田修二/やがて逝去) ※新仮名遣ひで掲載
6 グラビアの写真の巴里をうろつきて去(い)なうともせぬ春の蝿かな
アサヒタウンズ 6/17号,佳作 (米川千嘉子)
5 しやらくさや冬より覚めし飼亀は甲羅干しつつバナナ味はふ
朝日歌壇 4/26 (島田修二) ※新仮名遣ひで掲載
4 曰くつきの空地なれども季(とき)なれや花大根にひた染まりたる
アサヒタウンズ 4/15号,佳作 (米川千嘉子)
3 裏山を去年(こぞ)彩りし木の葉たちほぼ一(ひと)色に朽ちゆきにけり
朝日歌壇 2/20 (島田修二・初入選)
↑<平成16年より作歌に注力>
↓<平成15年以前の発表歌>
2 酔ざめの帰路の坂なる冬銀河遥か二十歳は裸眼なりしよ
BS短歌秋季スペシャル 15年11/29実況,題 [星] (尾崎左永子)10選
1 豪放にして磊落の君なればにはかに眠る柩(ひつぎ)狭しよ
BS短歌秋季スペシャル 12年10/28実況,題[眠る](高橋睦郎)注目作
(C) Toshikazu Itasaka toshikazu@itasaka.com